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位相戦線  作者: 神代零


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第二十一話 「境界外避難区」

 横浜第七相位区は、

 もう都市の形を保っていなかった。


 崩壊したビル群。


 黒く染まる空。


 白観測者と黒観測者。


 二つの巨大な“眼”が、

 世界を挟み込むように浮かんでいる。


 その光景を、

 境界外避難区から人々が見上げていた。


 泣く子供。


 沈黙する大人。


 武装警備隊。


 混乱。


 怒号。


 世界の終わりみたいな空気だった。


「……想定より早い」


 紗那が低く呟く。


 俺たちは崩壊区域北西、

 永久機構臨時避難区画へ到達していた。


 だが。


 安全とは程遠い。


 空気そのものが不安定だ。


 時折、

 人の輪郭がノイズみたいに揺れている。


 黒域侵食。


 もう境界外まで広がっている。


「玲司」


 ユナが俺の服を掴く。


「みんな……怖がってる」


 当然だった。


 空を見れば分かる。


 あんなものが浮かんでいて、

 正常でいられる人間はいない。


「大丈夫だ」


 そう言いながら、

 本当は何一つ大丈夫じゃなかった。


 その時。


 避難区中央モニターへ緊急通信が入る。


『全避難民へ通達』


 白い画面。


 中央統制局紋章。


 そして。


 榊一臣の姿が映った。


 避難区全体が静まり返る。


『横浜第七相位区で発生した黒域災害について、

 永久機構中央統制局より正式声明を行う』


 冷静な声。


 落ち着きすぎている。


 まるで。


 今の状況すら想定内みたいだった。


『現在、

 特殊存在災害による相位崩壊が発生している』


 その瞬間。


 画面へユナの姿が映る。


 避難民たちがざわめいた。


『零番核個体。

 コードネーム《ユナ》』


 ユナの身体が震える。


 俺は即座にモニターを見る。


 榊の目がこちらを見ていた。


『当個体は、

 人類文明崩壊危険度特級に指定される』


 避難区が騒然となる。


 恐怖。


 怒り。


 混乱。


 人々の視線がユナへ向き始める。


「っ……」


 ユナが俯く。


『ただし』


 榊が続ける。


『永久機構は、

 人類保全を最優先とする』


 嫌な予感。


『零番核個体を中央統制局へ引き渡した者へ、

 永久市民権及び優先固定保障を与える』


 空気が変わった。


 人々の目。


 恐怖が、

 欲望へ変わる。


 最悪だ。


 榊は分かってやっている。


 避難民の中から、

 誰かが叫ぶ。


「あいつが原因なのか!?」


「ふざけるな……!」


「家族が消えたんだぞ!」


 ユナが震える。


 俺は前へ出る。


「見るな」


 だが。


 人間の恐怖は止まらない。


『神代玲司特務観測官へ通達』


 榊の声。


『君はまだ選べる』


 モニター越し。


 それでも。


 あの男は本当にこちらを見ていた。


『人類側へ戻れ』


 白観測者が空で脈動する。


『零番核を引き渡せば、

 黒域封鎖を保証する』


 沈黙。


 避難区全体が、

 俺の返答を待っていた。


 ユナが小さく震える。


「……玲司」


 紗那が低く言う。


「答えないでください」


 だが。


 榊は静かに続ける。


『もし拒否するなら』


 その瞬間。


 避難区上空へ、

 白い光が出現した。


 空間転移。


 白百合部隊。


 数十機。


 完全武装。


『人類保全手順を開始する』


 戦闘が始まる。


 そう理解した瞬間。


 ユナが、

 俺の服を強く掴んだ。


「……ごめんなさい」


 泣きそうな声だった。

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