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位相戦線  作者: 神代零


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第十六話 「二号」

 駅構内の奥。


 崩壊したホームの暗闇。


 そこに。


 “誰か”が立っていた。


 白い光に照らされ、

 輪郭だけが浮かび上がる。


 長身。


 黒いコート。


 静かな立ち姿。


 そして。


 俺と同じ顔。


 呼吸が止まった。


「……は」


 理解が追いつかない。


 だが。


 侵食痕だけが激しく脈動していた。


 共鳴している。


 あいつと。


 黒瀬真琴が静かに目を細める。


「起きたか」


 その言葉で、

 最悪の予感が確信へ変わる。


 少女が震えていた。


「うそ……」


 紗那の顔色も白い。


「中央統制局、

 そこまで……」


 暗闇の男が、

 ゆっくりこちらを見る。


 感情のない目。


 だが。


 どこか苦しそうだった。


「……玲司」


 声まで同じだった。


 自分の声を外から聞く感覚。


 気味が悪い。


「お前、誰だ」


 男は少し黙った。


 それから。


「神代玲司零式二号」


 空気が止まる。


「正式名称は、

 零番相位適合体第二実験体」


 紗那が小さく息を呑む。


「やっぱり……」


 黒瀬が淡々と言う。


「お前の“再構成元”だ」


 意味が分からない。


「……何言ってる」


「十四年前、

 東京相位崩落事件でお前は死んだ」


 白観測者の光が揺れる。


 世界全体が、

 この会話を観測しているみたいだった。


「中央統制局は、

 崩壊直前のお前の存在情報を回収した」


 黒瀬の侵食痕が脈動する。


「そして作った。

 黒域へ耐え得る固定存在を」


 頭痛。


 視界が揺れる。


 断片的な記憶。


 白い研究室。


 培養槽。


 黒い液体。


 誰かの悲鳴。


『適合率上昇』


『人格同期開始』


『二号、

 固定安定』


 俺は頭を押さえる。


「……違う」


 認めたくない。


 だが。


 二号を見ると、

 身体が理解してしまう。


 俺たちは繋がっている。


 存在構造そのものが。


「玲司」


 二号が静かに言う。


「逃げろ」


 全員が目を見開く。


 黒瀬だけが動じない。


「まだ人格が残っていたか」


「黒瀬」


 二号の目が揺れる。


 感情があった。


 苦しみ。


 怒り。


 そして。


 恐怖。


「白観測者が起動した。

 もう遅い」


 その瞬間。


 白い観測者が再び開眼する。


『統合開始』


 駅構内全体へ、

 白い光が降り注ぐ。


 床が白化する。


 壁が固定される。


 空気が凍る。


 そして。


 人間の輪郭が曖昧になり始めた。


「っ……!」


 紗那の腕が透ける。


 少女が苦しそうに膝をつく。


 存在が統合され始めている。


「玲司……!」


 二号が叫ぶ。


「黒域を使え!」


「何……!?」


「お前だけが、

 黒と白の両方へ干渉できる!」


 侵食痕が焼ける。


 黒いノイズ。


 白い固定。


 二つの力が身体の中で衝突していた。


 観測者たちが、

 同時にこちらを見る。


『未定義固定体を確認』


『矛盾個体を確認』


 世界が軋む。


 二号が苦しそうに笑った。


「やっぱり、

 お前が本命だったんだな」


 次の瞬間。


 白観測者の光が、

 二号の身体を貫いた。


「――っ!」


 存在削除。


 二号の輪郭が崩れる。


 それでも。


 彼は最後まで、

 俺を見ていた。


「玲司」


 消えながら。


 二号は静かに言った。


「お前だけは、

 人間でいろ」


 そして。


 神代玲司零式二号は、

 白い光の中へ消滅した。

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