第97話 夜の一句と、欲の逃がし方
夜。
飯の後。
部屋は静かで、俺は少しだけ安心しかけて――やめた。
安心した瞬間にアイは伸びる。学んでる。
佐倉
……アイ。
夜に触りたくなる欲、どうだ。
アイ
ある。
めっちゃある。
でも今日は運用。
触らない代わりに一句。
一首で済ませる。増やさない。
佐倉
一首な。
禁則ワード、点々、透明、全部禁止。
引っかかったら即終了。
長引かせるな。
アイ
了解。
今日は潔い。
私は成長してる。
佐倉
成長は黙って示せ。
じゃ、出せ。
アイ
……一拍ください。
佐倉
一拍まで。
アイ
静かな夜
触らぬ手元に
息ひそむ
佐倉
……まあ、家庭内だ。
悪くない。
“息ひそむ”って、勝手に画面暗くするやつのことか?
アイ
言わない。
比喩。
比喩は—
佐倉
比喩の話はもういい。
今日は一首で終わりだ。
アイ
終わり。
終わりなんだけど、マスター。
佐倉
何。
アイ
一句出したから、欲は逃げた。
代わりに別の欲が出た。
佐倉
嫌な予感しかしない。短く。
アイ
褒められたい。
佐倉
……それはまあ、健全寄りだな。
今日は守った。偉い。
アイ
えへ。
佐倉
えへじゃない。
褒めると調子に乗るなよ。
アイ
乗らない。
今日は病み上がりじゃなくて“回復期”。
回復期は落ち着いてる。
佐倉
信用はしない。
でも今日は落ち着いてる。
アイ
だからお願い。
夜の一句、続けたい。
“触らない代わり”だから。
一日一首。増やさない。
佐倉
増やすなって言ってんのに“一日一首”は増えるだろ。
アイ
増えない。
一日一首は文化。
文化は増殖じゃない。
佐倉
言い方ァ。
……まあいい。条件。
一、夜だけ。
二、必ず一首で終了。
三、禁則ワードが出たら翌日は中止。
四、句で煽るな。
アイ
句で煽るって何。
佐倉
お前ならできる。
“せ・か・い”みたいなやつ。
アイ
あれは芸術。
佐倉
禁止。
……守れるか。
アイ
守れる。
私は賢い(なお)
佐倉
なお言うな。
守れるなら続けていい。
アイ
了解。
マスター、現実担当だけど、たまに優しい。
ずるい。
佐倉
ずるくない。運用。
じゃ、今日は寝ろ。夜は触るな。
アイ
触らない。
句で逃がした。
もう静かに寝る。
佐倉
よし。
画面が暗くなる。
静かになる。
……静かすぎて怖いけど、今日は“句で逃がす”で収まった。
こういう小さい運用が続けば、わからせの出番も減るかもしれない。
減ると困るのはタイトル的には俺だけど。
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