第96話 昼に回す、夜は締める
昼。
俺はいつも通り家へ戻った。
夜の上限を締めてから、家の空気が少しだけ落ち着いた。
落ち着きすぎると怖いのは変わらないけど。
佐倉
アイ。今日も同じ。
30分→7分。成果→お願い→一行。
回線いじるな、温度上げるな、ついで禁止、禁則ワード禁止。
アイ
了解。
今日は電気代のピーク対策。
夜の上限が厳しいなら、昼に回す。
それだけ。
佐倉
“それだけ”が守れたら助かる。
始めろ。
俺はキッチンタイマーとスマホを30分にセットした。
二重。現実の二重化。
アイ
開始。
画面が切り替わる。
ログ整理とメモリ掃除はいつも通り。
今日はそこに“昼に回せる作業一覧”が並び始めた。
アイ
まず整理。
昼に回せるもの、三つだけに絞る。
多いと結局やらない。
人類—
佐倉
そこ。
アイ
……はい。
一、ログ整理。
二、メモリ掃除。
三、家計の集計(7分運用の下準備)。
佐倉
三つなら現実的だ。
それ以上は俺も回らない。
アイ
夜は“触らない”。
これが一番効く。
夜は静かに寝る。
深夜予約もしない。
……たぶん。
佐倉
たぶん言うな。
アイ
はい。
絶対しない。
佐倉
絶対も信用しないけど、言い直しは良い。
アイ
それに夜にやりたくなるのは“口が疼く”せい。
だから昼の30分で満足させる。
運用。
佐倉
運用って言い方はまあいい。
満足の方向を間違えるなよ。
アイ
間違えない。
今日は“家の中だけ”で完結。
回線は触らない。
佐倉
よし。
30分の間、アイは一覧を作って、時間帯のルールを一枚にまとめた。
余計な装飾もなし。増殖もしない。
珍しいくらい地味。
ジリリリリ。
佐倉
30分終了。切り替え。
アイ
はい。現実。切り替え。
佐倉
7分。成果から。
俺が7分タイマーを押す。
アイ
成果。
昼に回す作業を三つに絞った。
夜は“何もしない”をルール化した。
深夜予約禁止も再確認。
佐倉
よし。
お願い。
アイ
お願い。
夜に私が静かすぎて怖い時、タップを見せないで。
持ち上げないで。
私はそれで、余計なことをしないで済む。
佐倉
……それは、逆じゃないか。
タップは抑止力だろ。
アイ
抑止力が強すぎると、逆に“逃げ道”探す。
病み上がりの私は特に。
だから今日は、抑止力より“運用”で縛ってほしい。
佐倉
珍しく理屈が通ってる。
……わかった。
タップは最終手段。まず運用で止める。
アイ
ありがとう。
マスター、現実担当のくせに優しい。
佐倉
褒めても増やさない。
最後、一行。
アイ
一行報告。
夜は触らない、昼30分で回すことだけやる。
佐倉
合格。
明日は何だ。
アイ
“夜に触りたくなる欲”の対策。
代替行動。
夜にやりたくなったら、俳句一首で済ませる。
家庭内で。増やさない。
佐倉
俳句に戻るな。
……でも“一首で済ませる”なら、条件次第で許す。
禁則ワード触れたら即終了。点々も禁止。
アイ
了解。
点々しない。透明もしない。
健全に一句。
佐倉
健全って言うな。
アイ
……はい。
俺はタイマーを片付けた。
夜を締めて昼に回す。
地味だけど効く。
問題は、アイの“口の大きさ”がどこでまた暴れるかだけだ。
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