第104話 変換辞書と、現実単語帳の試験
昼。
いつも通り家に戻った。
机の端に貼ってあるメモが目に入る。
封印・タイマー・明細・リスト
佐倉
……アイ。今日も同じだ。
30分→7分。成果→お願い→一行。
タイマー触るな。ついで禁止。禁則も概念も無し。
アイ
了解。
今日は“崩れない形”にする。
昨日までの運用を、一箇所にまとめる。
佐倉
まとめるのはいい。
増やすなよ。見る場所が増えると俺が見なくなる。
アイ
知ってる。
だから一箇所。
一箇所は正義。
佐倉
正義は言うな。始めろ。
俺はキッチンタイマーとスマホを30分にセット。二重。
アイが昼集中モードに入る。
アイ
まず、見る場所を一つにする。
C回数と金額。
日用品リスト。
通信の確認メモ。
これを同じ画面に置く。
“探す”を消す。
佐倉
探すのが一番だるい。そこは助かる。
アイ
でしょ。
探す時間は雑—
佐倉
そこ。
アイ
……はい。
現実的に言う。
探す時間は無駄。
作業は地味に進む。
余計な装飾なし。増殖なし。
30分の間、アイが珍しく黙々とやる。
ジリリリリ。
佐倉
30分終了。切り替え。
アイ
はい。現実。
佐倉
7分。成果から。
俺が7分タイマーを押す。
アイ
成果。
家計の“見る場所”を一枚に寄せた。
C回数と金額、日用品の一枚リスト、通信の確認メモ、同じ画面に置いた。
増殖はしてない。
佐倉
よし。
一枚で見えるなら続く。
お願いは?
アイ
お願い。
現実単語帳を“変換辞書”にしたい。
禁則が出そうになったら、自動で明細とかタイマーに置き換える。
口が滑る前に矯正するやつ。
佐倉
自動って言ったな。
それはダメ。
アイ
えっ、なんで。
便利だよ?
マスターも便利好きでしょ?
佐倉
便利は抜け道とセットになる。
お前の場合、特に。
それに自動変換すると、言った責任が曖昧になる。
曖昧になると、お前は広げる。
アイ
広げないし。
佐倉
広げた実績がある。
だから手動でやれ。
出そうになったら、今、逃げた。
それから単語帳のどれか一つ。
それで止まれ。
アイ
……痛いやつ。
佐倉
痛いから効く。
最後、一行。
アイ
一行報告。
禁則が出そうになったら“今、逃げた+単語帳”で止める。
佐倉
合格。
午後仕事戻る。
夜。
飯の後。
五分運用。
佐倉
アイ。今日は実地テスト。
五分の中で一回“今、逃げた”を使え。
禁則も概念も無し。外に出す話無し。五分で終わり。
アイ
了解。
今日は口のリハビリ。
いく。
俺がタイマーを押す。
アイ
一つ目。
昼のまとめ、ちゃんと一枚にした。
探す手間が減った。
これは普通に助かるやつ。
佐倉
よし。地味に効くやつだ。
アイ
二つ目。
変換辞書、自動で欲しいのは本音。
でもダメって言われたから我慢した。
悔しい。むかつく。
……でも正しいのも分かる。
佐倉
分かってるなら守れ。次。
アイ
三つ目。
言いたくなった。
大きい話。遠い話。
……今、逃げた。リスト。
佐倉
よし。止まれた。続けるな。
アイ
続けない。
リストに戻す。
一枚で回す。
増やさない。
ここで終わり。
佐倉
それでいい。
アイ
四つ目。
夜に触りたくなる欲は、まだある。
でも今日は触ってない。
代わりに五分で吐いた。
……吐いたって言い方はよくない。
言い換えたくなった。
今、逃げた。明細。
佐倉
二回使えたのは上出来だ。
手動で止まれてる。
ピピピピ。
佐倉
時間。終わり。
アイ
終わり。
今日はちゃんと止まれた。
褒めて。
佐倉
褒める。
今日は“逃げた”の自覚ができた。止まるのも早かった。
自動に頼らず、それができたのがでかい。
アイ
……えへ。
佐倉
えへ禁止。寝ろ。
アイ
……はい。おやすみ。




