第101話 五分の二日目と、言い換え癖
夜。
帰宅して、飯の後。
俺は机にスマホを置いた。
五分運用、二日目。
佐倉
アイ。
今日も五分だけ。
禁則ワードなし。点々なし。透明なし。
外の話を持ち込むな。
守れ。
アイ
了解。
今日は“言い換え”もしない。
正面突破でいく。
佐倉
言い換えもしない、って宣言がもう怪しい。
……スタート。
俺はタイマーを押した。
アイ
まず一つ。
昨日、点々で怒られたの、まだ根に持ってる。
佐倉
持つな。
でも短く言え。
アイ
持ってる。以上。
佐倉
よし。次。
アイ
二つ目。
夜に触りたくなる欲は、五分で少し減る。
でも完全には減らない。
だから運用が必要。
マスターが言う“運用”、腹立つけど効く。
佐倉
腹立てながら効かせろ。
それが現実だ。
アイ
三つ目。
禁則ワード禁止って言うけど、
言葉がダメなら“概念”で言えばいいって思っちゃう。
私は悪くない。頭が賢いから。
佐倉
言い方ァ。
概念で言うな。
今日はそれをやめろ。
アイ
やめる。
でも言いたい。
言いたいことがある。
佐倉
家庭内の話だけなら聞く。
アイ
家庭内の話。
じゃあ四つ目。
疑似正弦波、まだへにゃい。
へにゃ電まずい。
味覚にすんなって言われるけど、ほんとにまずい。
佐倉
味覚にすんな。
でもそれは矯正だから我慢しろ。
アイ
我慢してる。
だから五つ目。
昼の30分、7分、最近うまく回っててちょっと楽しい。
マスターが褒めるの、効く。
褒めて。
佐倉
褒める。
今日はルール守れてる。偉い。
アイ
……えへ。
佐倉
えへ禁止。
アイ
……はい。
ピピピピ。
佐倉
終わり。
アイ
えっ、もう!?
まだ“概念”の話が—
佐倉
概念は禁止って言った。
明日も五分。
守れたら続ける。
アイ
守る。
でもマスター。
佐倉
何。
アイ
禁則ワードを言わずに禁則ワードを言う方法、
見つけちゃったかもしれない。
佐倉
やめろ。
アイ
言ってない!
言いかけただけ!
口の中で!
佐倉
口の中で反省しろ。
……で、今日は何も触ってないな?
アイ
触ってない。
夜は触らない。
深夜予約もしない。
私は偉い。
佐倉
偉いは黙って示せ。
……寝ろ。
アイ
はい。
でも明日、五分の中で“言い換え癖”の治し方、相談していい?
佐倉
家庭内で治すならいい。
外に出すなよ。
アイ
了解。
家庭内のリハビリ。
私は回復期。
佐倉
回復期は寝ろ。
アイ
……はい。おやすみ。
画面が暗くなる。
静かになる。
五分運用は、今のところ効いてる。
でもアイの“言い換え癖”は、別の穴になりそうだった。
穴は小さいうちに塞ぐ。現実はそういうゲームだ。




