▼恋をしちゃいました(改編)
ミッチェルの話をまとめるとこうだ。
もともと、ミッチェルは大精霊としての息が長い方で、たまたま、ある国が崩壊してしまうような大災害があった時に捧げられた少女を見ていたのだそうだ。
その時の少女は特に特別な力があった訳では無いが美しく人目を引き、身寄りがなかった為に生け贄に選出されていた。
呪いとも言うべき祈りの言霊を吸い取って生きのびたのも、たまたま、としか言いようがなかった。
その少女は、国を救うことも出来ず、生け贄として死ぬ事も出来ず、ただ生き延びることとなった。
とても美しい金髪の少女だった。
彼女が生きて数年、唐突に身の中に異物の気配を感じた。医者に行こうにも人を信じられなくなった彼女は人との交流を絶って生きていたので、戸惑い、腹が破裂するように膨れるまでそれの存在を拒絶し続けた。何故なら、彼女は関係を持ったことがないのだ。有り得ないと頭を振って日々を過ごしていたが、その日は訪れた。
激しい腹痛。
地に伏すようにして転がった先に見えた赤。
へその緒をつけたままの、娘が、そこにいた。
目にした途端に湧き上がる嫌悪感。
寒気、怖気、鳥肌が立って居てもたってもいられない。
でも、同時に感じる解放感。
そうだ、自分は「呪いから解放された」。
彼女の行方は見ていないので分からないけれど、その後、彼女はそのまま帰っては来なかった。
そこからは赤子を見ていた。
放置すれば死ぬだろう。
気紛れに抱いて、世話をした。
「赤毛」が明るい赤子は、とても美しい母親譲りの面立ちをしていた。
1人で生きていけるようになったら離してあげた。
しかし、すぐにしんでしまった。
特別な子ではなかったから、身のうちにある魔術の残穢に耐えられなかったのか、幼くも子を残して。
そして、またその子も呪いを受け継いでいた。
子が生まれる度に拾いに行き、育てばその子の生涯を見送った。
どの子もどの子もしんでしまった。
悠久の時を生きる自分とは、やはり違う存在なのだと強く感じ、いつしか感情のようなものが芽生え始めていた。
彼女たちの名前は『リオ』。
全てのはじまり、金髪の美しい少女がそう呼ばれていた。
リオは代を経るごとに先代のリオの怨念もバトンパスされるように深い絶望を負い、人間から離れ、髪や目は固まった血のような色を帯びていった。
魔女と呼ばれ、悪女として名を馳せ、母の優しさを知らずに生涯を終えるリオ。
そんなリオが言ったのだ。
とある人を好きになった。自分ではどうしようもないから、力を貸してくれと。
「そうして今のリオさんと、契約したのね。」
「ああ、そうだ。」
「それなら魔女の願いは今のところ叶っているのでしょう。なぜ助けろと。」
剣のあるアレクシスの言葉に、くしゃりとピンクの髪を混ぜて視線を床に落としながらミッチェルが続きを言う。
「俺の命はもう時期尽きる。」
「悠久の時を生きる大精霊のいのちが?」
「それ程の代償を払う対抗魔法だった。」
長い時をかけて雁字搦めになったその力は、大精霊でも10年抑えていられない代物に育っていた。
「そうすれば、反動は全てリオに向かってしまう。」
数百年近い呪いの力の反動。考えるまでもなく、被害はリオだけではすまないだろう。
「…私に、何をさせたいのミッチェル。」
「アリシアちゃん、ダメだよ!させないからね。」
ミッチェルの顔を覗き込むように声をかけると、すかさずアレクシスがまだなにをするとも言わぬうちから反論する。
「エイベル・ディオンを殺して欲しい。」




