▼『なにか』
ええいままよ!と、事情を全てアレクシスに話してしまい、少しの心情的な手心で遊び半分であったことだけ隠させていただいた。嘘は言ってはない。聞かれなかったから、言わなかっただけだ。
「なるほど、それで妖怪だかおばけだか分からないものに会いに行くためにそんな可愛い格好しているわけだね。」
僕は初めて見ました。と付け加えながら、アレクシスは嘆息する。弟が嫌味を覚えた…?表情は嫌味を全く感じさせないのが凄いなぁと思いつつ、確かに、貴族の鷹狩とかにも参加していないから、普段はこのような格好はあまりしないのでアレクシスが初見でもおかしくない。
「また今度、街へ遊びに行く時に」
一緒に行く?と外の食べ物と玩具で釣る妥協案のようなものを提示して見逃してもらおうとすると、目に見えてアレクシスが上機嫌になった。
「ほんと?ぜったいだよ?忘れちゃダメだからね?」
一気に急浮上してキラキラとより一層目を輝かせているアレクシスに手を取られて約束する。そこまでの材料ではなかった気がするが、どうやら見逃してくれるのだから、休日の一日、多すぎる程のお小遣いの一部を献上するくらい目を瞑ろう。
「じゃあ、時間に遅れても申し訳ないし、いこっか。」
「へ?」
「僕もアリシアちゃんと一緒にミッチェルってやつに挨拶しに行く。」
いやいや、私は悪役令嬢の加護があるから、今回ミッチェルに会いに行っても大した事にはならないだろうが、これで長男のアレクシスに何かあれば家の一大事で私の一大事だ。
なんとかお引き取り願いたい。
「…それに、アリシアちゃん、手に持ってるのなに?」
「あ、フランボワーズの『なにか』。」
「もう!アリシアちゃんの作る『なにか』のお菓子は全部僕が食べるんだよ!」
新作じゃないか!とプンプンする様は幼児として100点満点なのに、序のように荷物を攫って持ってしまう紳士さはロマンス小説の王子様のようだ。
流れるようにそのまま馬車にエスコートされ、一路、アレクシスを連れてディオン邸へ向かうことになった。
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