▼名探偵
翌朝馬車に乗り込もうと、編み上げブーツを意気揚々と鳴らして裏門へ回ると、
てーん!
と、まさしく
てーん!
と、アレクシスが仁王立ちしていた。
「アレク、どこかへ用事?」
「どこかへ行くのはアリシアちゃんでしょ?」
冷や汗がたらりと背中を伝う。マズイ。あの顔は全てを見通している。アレクシスにとって、私が悪役令嬢として完全復活するわけにはいかない。他の攻略者も含めてそれ以外なら誰にとって悪役でも悪者でもヒールでも構わないが、断罪ルートは何度読み込んでも本当に悲惨なのだ。御免こうむる。
「えっと、エイベル様のお見舞いに伺おうと…思って…」
内緒にしてくれないかしら?と五割程度の真実を素直に話して出方を伺うと、
「全くアリシアちゃんは…。アリシアちゃんの品位を落とした奴なんか、放っておけばいい。」
ミッチェルの事はバレていないらしい。ならば、素早く言いくるめて屋敷を出させて頂こう。
「実は前にディオン家にお見舞いに行った時にね、入れていただけなくて。まだお顔も拝見していないの。だから、」
「アリシアちゃんに更に恥をかかせたのか、ディオンの輩は!」
早まった。
もうアレクシスは、ぷんすこ所ではない。激怒である。
なぜにこの弟は、エイベル様、ひいてはディオンの家に対してここまで沸点が低いのか。私やその他大勢に対しては、基本的に無関心だと思う。社交辞令、儀礼以上のことはしないし、マイクパフォーマンスだって誕生日の時にみたかな?というくらい平素穏やかで波が立つことがない。
そんなアレクシスがエイベル様には大激怒する。
愛情の反対は無関心。
その逆も真だとすると、アレクシスはエイベル様と酷く打ち解けるうちに、尊敬の念が高まりすぎて、このような言動になっているのだろうか。
私は一切馴れ合わなかったというのに、いつの間に2人は仲良くなっていたのだろうか。それともツンデレというやつなのだろうか。今はそうは言わないのだろうか。属性というやつには疎いのだけれど。
「で、会わせて貰えないから、ミッチェルっていう使用人か何かに会いに行くつもりだったの?」
九割の真実見抜く、見た目は子供、頭脳は修士の属性は名探偵かな?




