↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
9/33

浅井シゲの古民家宿

網走駅から手配していた送迎の古い軽ワゴン車に揺られ、凍りついた深い山道を登ること数十分。二人が到着したのは、豪雪の中にひっそりと佇む、築百年は超えているであろう頑丈な古民家宿だった。

ガラガラと引き戸を開けると、温かい薪ストーブの熱気とともに、強烈なタバコの煙の匂いが鼻を突いた。

「おぅ、よく来たな。遠いところ災難だったね、駅前で変なキチガイに絡まれたろ」

土間でパチパチと薪が爆ぜる音の中、一本の煙草――セブンスターを美味そうに燻らせながら二人を出迎えたのは、この網走の山を我が庭のように知り尽くした老猟師、浅井シゲ(67歳)だった。

日に焼けた深い皺の刻まれた顔、鋭いながらも温かみのある瞳、そして壁に立てかけられた年季の入った狩猟用のライフル。その佇まいには、過酷な自然を生き抜いてきた絶対的な安心感があった。

「あいつの言うことは気にせんでいい。……ただな」

シゲさんはタバコの煙をふぅーっと天井へ吹き上げ、少しだけ目を細めた。

「この山には昔から、おかしな伝承があってな。冬、太陽が消えて水がすべて凍る時期にだけ、山の裏側からやってくる祟り神――そいつを、この土地の古い人間は『ウラモドシ』と呼ぶんだ」

ストーブの暖かさの中にいるはずなのに、マイクは駅前で感じたあの冷気が、再び足元から這い上がってくるのを感じていた。

「さ、お前さんたちが最後の客だ。奥の部屋へ行きな。先客の、ドイツ人夫婦と中国人の若いカップルがもう寛んでる」

シゲさんに促され、マイクとエミリーは古民家の奥へと進む。これからこの宿で、国境を越えた仲間たちと共に、宇宙的な恐怖の幕開けを迎えることになるとは、まだ誰も予想していなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。