アバシリへのケイコク
事件の直後、養豚場は完全に政府の特殊部隊によって封鎖された。
あの奇妙な「グレーの岩」は分厚い鉛のケースに回収され、ジョージとアーサーには、何の説明もないまま口封じとして「2つの勲章」が秘密裏に授与された。政府の人間も、これが何なのか分かっていないようだった。
その夜。ジョージは自宅のベッドで、嫌な汗をかきながら深い眠りの中にいた。
夢を見た。
底の知れない真っ暗な宇宙の深淵。そこには、数え切れないほどの「連なる泡」のようなものが浮いており、その真ん中で、何か巨大で悍ましい「怪物のような影」が、世界を貪り食うようにドクドクと脈打っている。
「ハッ……!」
ジョージは強烈な悪寒と共に飛び起きた。
時計の針は深夜3時を回っている。ただの悪夢じゃない。あの得体の知れない化け物どもの親玉は、まだ別の場所で狙いを定めている。
ジョージは震える手で国際電話の受話器を取り、滅多にかけない日本の親戚の番号を回した。
相手は、日本の北海道、網走にいる従兄弟のマイクだ。
「……もしもし、ジョージか? こんな夜中に一体なんだよ、こっちはもうすぐ冬で寒いんだぞ」
眠そうなマイクの声が受話器から聞こえる。
ジョージは受話器を壊れそうなほど握りしめ、喉を引き裂くように怒鳴った。
「マイク、よく聞け! わけのわからないバケモノが出たら水をぶっかけろ! とにかく太陽と水だ! 何があっても、水と太陽から逃げるな……!」
「おいおい、急に何言ってるんだよジョージ……」
困惑するマイクの声を無視して、ジョージは荒い息をつきながら電話を切った。
これが「ウラモドシ」や「ウボサスラ」と呼ばれる宇宙の絶望であること、そして次の舞台となる網走が、その弱点である「太陽がなく、水も凍りついている最悪のデッドゾーン」であることなど、この時のジョージはまだ知る由もなかった――。




