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作戦 オペレーション リバース

巨大な鋼鉄の防爆扉が開き、マイクたち――今や「浅井家」となった面々と、ジョージ・テキサス総司令官は、エリア51の地下深くに位置する中央作戦司令室へと足を踏み入れた。

部屋の中央には、世界中の気象衛星データと地殻変動をリアルタイムで映し出す、巨大なホログラム・タクティカルスクリーンが青白く輝いている。

「よくぞここまで生き抜いてくれた。改めて、人類を代表して諸君に感謝する」

ポーカー大統領は、ステージ上の冷徹な顔から一転して、浅井マイクとジョージの肩に温かい手を置き、深く頭を下げた。国家のトップとしての、嘘偽りのない心からの労いだった。

「だが、感傷に浸っている時間は一分もない。……織田参謀、作戦の説明を」

大統領に促され、かつての狂気から完全に覚醒した最高指揮官・織田が、冷徹な知性を宿した眼鏡の奥の目をギラつかせながら、ホログラムの前に歩み出た。周囲を固める日米独中のエリート参謀将校たちが、一斉に織田へと敬礼を送る。今や彼は、世界連合軍の最高戦略脳だった。

「諸君、ターゲットはテキサスにあるジョージ総司令官の養豚場跡地。現在、そこには直径3キロメートルに及ぶ巨大な『時空の大穴(門)』が開き、マイナス物質宇宙の絶対的支配者である超巨大ブラックホール『ウボサスラ0-01』の本体が、プラス宇宙を完全に飲み込もうと拍動を強めている」

織田が画面を操作すると、テキサスの赤土の真ん中に蠢く、見る者を狂わせるような漆黒のエネルギーの塊が映し出された。

「ウラモドシの異形どもは、空間の『隙間』を利用してこちらの物理攻撃を完全に反転(バグ)させてくる。だが、我々には日米独中の技術を結集した二段階の完全攻略ロジックがある」

織田の言葉を引き継ぎ、特殊作戦群の鷹・佐藤陸曹が、仕事モードの鋭い眼光でホログラムを指差した。

「まず第一段階。世界連合軍の全爆撃機による『超過密絨毯爆撃』だ。弾丸やミサイルをただ撃つんじゃない。空間の歪みそのものを、逃げ場のない『純粋な物理的質量の暴力』で埋め尽くし、奴らの反転能力を完全にフリーズ(バグらせる)させる。担当するのは、俺たち特殊作戦群の生き残りと、クラウス率いるKSKの混成部隊だ」

「規律とタイミングが全てだ。1ミリの狂いもなく空間を質量で圧殺する」と、クラウスが隣で鉄の笑顔を浮かべる。

「そして第二段階」織田が画面をさらに拡大する。「フリーズした淀みを一網打尽にするのは、東京で破壊されたシステムをさらに改良した、中国の超科学の結晶。最大出力の『高密度人工雨発生装置(レイン・メイカー)』だ。今回は戦闘機何百機もの上空から、通常の雨の数百倍の質量と密度を孕んだ『人工の豪雨』を、テキサスの荒野へ一滴の隙間もなく降り注がせる!」

「ハッ、俺が15年前にやった散水車の、世界規模バージョンってわけだな!」

ジョージ・テキサスが不敵に笑い、胸のワシントンの勲章をパチンと叩いた。

「そうだ。だが、それだけでは大元のウボサスラ0-01は殺せない」

織田は最後に、14歳のアニー・浅井を見つめた。

「ラヴクラフトの言葉通り、門の向こうへ行けるのは、かつて招かれたジョージ総司令官のみ。ジョージがこじ開けた門の奥へ突入し、ウボサスラの核心を突くのは、網走の極寒の中で、決して凍らない究極の命の密度『羊水』から生まれた、アニー、マイク 君たち『浅井家』の純粋な生命エネルギーだけだ」

「……分かった。やってやるよ」

浅井マイクは、背負ったシゲさんの形見のライフルの感触を確かめ、チェンも胸のポケットのジッポライターをそっと叩いた。彼らの後ろでは、ブラウン肌に引き締まった整備リーダー・アントニオが、女性陣の前で真っ赤になりながらも「船も、ヘリも、12人の部下たちと完璧に仕上げてある……! 浅井家を、絶対の精度で送り届けてみせる!」と、力強く宣言した。

「よし、ポーカーの時間は終わりだ」

大統領が冷徹なギャンブラーの笑みを浮かべ、全軍の通信を開いた。

「これより、人類最終反撃作戦――『オペレーション・リバース』を開始する! 全軍、出撃せよ!!」

中央作戦司令室に、勝利への警報(サイレン)が鳴り響く。

人類の250年にわたる隠された因縁、そして15年間の絶望と牙が、今、テキサスの養豚場へ向けて一気に解き放たれようとしていた。

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