勲章の真実と浅井マイク
全軍が静まり返る中、滑走路の中央に設置された特設ステージに、一人の男が登壇した。
アメリカ合衆国第47代大統領、通称「ポーカー大統領」。
冷徹なギャンブラーのような鋭い眼光と、いかなる絶望の戦況でも表情を崩さない不敵な笑みを併せ持つ、人類の最高指導者だ。
大統領はマイクたち生存者の前に立つと、マイクを握り、ネバダの荒野を震わせるような力強い声を響かせた。
「世界連合軍の諸君! 我々は15年間、このネバダの地で奴らを迎え撃つ牙を研いできた! 本日ここに、人類の反撃の先頭に立つ、偉大なる英雄を紹介する!」
大統領はまず、テキサスの養豚場で最初に水を武器に戦い、現在は連合軍の総司令官の座に就いている男を手を挙げて前に呼び寄せた。彼の胸には、かつて政府から口封じとして渡されたはずの、鈍く輝く「2つの勲章」があった。
大統領はその勲章を指差し、アメリカという国家が建国以来、ひた隠しにしてきた究極の歴史的真実を全軍の前で明かし始めた。
「諸君、彼が胸に掲げているその勲章の正体を知っているか? ……今から250年前、我が国の建国の父ジョージ・ワシントンは、この地を襲った『最初の淀み』――ウラモドシの異形どもを、蒸気列車と大量の水を使って密かに消し去っていた。アメリカという国家は、最初からあの怪異との戦いの中で産声を上げたのだ!」
大統領の言葉に、数十万の兵士たちがざわめいた。大統領の演説はさらに熱を帯びる。
「ワシントンは、その極秘の戦いを共に戦い抜いた戦友たちのために、自分自身の手でデザインし、鋳造した、世界に2つしか存在しない特別な勲章を作り出した。そして、独立を果たす前の混迷の時代、ワシントンは自らの手で、自らにその勲章を授与した。だが、アメリカ合衆国が正式に建国されて以降、この勲章が誰かの胸に輝いた歴史は一度たりともない。政府の倉庫の奥深くに、国家最高機密として厳重に封印されていたからだ!」
ポーカー大統領は、ジョージの肩を強く叩いた。
「つまり! この男、ジョージ・テキサスこそが、アメリカ合衆国という国家が誕生して以降、正式に政府からこのワシントンの勲章を授与された、歴史上『初めての男』なのだ! お前こそが、建国の父の意志を継ぐ、我が合衆国の真の総司令官だ!」
うおおおおおおおおおおお!!!!!
ネバダの荒野がひっくり返るほどの、凄まじい大歓声が巻き起こる。ジョージ・テキサスは、ただの養豚場経営者から、アメリカ250年の歴史の真実を背負う、伝説の英雄へと完全になったのだ。
そして大統領は、熱狂の渦の中で、マイクの目の前へと歩み寄った。
「そして日本の救世主、マイク! 網走を救い、東京の地獄を生き抜いたお前の不屈の闘志に、私は心からの敬意を表する。日本好きの偉大な戦士であるお前には、今日からこの最高の苗字を名乗ってもらう。お前の名は、マイク・サミュライ(サムライ)だ!」
全軍が再び沸き立とうとした、その瞬間だった。
マイクはニッと不敵に笑い、右手を軽く上げて、大統領の言葉を制した。
「大統領、ありがたいですが……サムライの苗字はなしで。俺たちには、網走で命を懸けて俺たちを守り、この島で天寿を全うした偉大なじいさんの名前があるんです。――『浅井』でお願いしまっす!」
その言葉に、ステージの袖にいたチェンは胸のポケットのシゲさんのジッポを強く握りしめ、アニーも父の背中を見つめて誇らしげに胸を張った。
ポーカー大統領は一瞬だけ驚愕に目を見開き、次の瞬間、ネバダの荒野を揺るがすほどの声で豪快にハハハと笑った。
「気に入った! 自らのルーツと、死せる戦友の魂を何よりも重んじるか! ならばお前は今日から、浅井マイクだ!!」
うおおおおおおおおおおお!!!!!
エリア51を埋め尽くす数十万の世界連合軍から、先ほどのジョージをも超える、空を割るほどの大歓声が巻き起こった。
シゲさんの魂のライフルを背負う男、浅井マイク。そして、その血を引く14歳のアニー・浅井。彼らは伝説の老猟師の名を背負う、世界最強の「浅井家」として、ジョージ・テキサス総司令官と共に、人類の命運を賭けた最終決戦の地へ、堂々と出陣するのだった。




