鉄の防壁――日独最精鋭の戦士たち
島での15年間、アニーに戦術を教え込み、レジスタンスの精鋭たちを鍛え上げたのは、あの東京の地獄を生き残った二人の本物のプロフェッショナルだった。
陸上自衛隊一等陸曹、佐藤 拓也。
彼は、自衛隊最強の秘密組織であり、選りすぐりのエリートしか入れない特殊部隊『特殊作戦群(JGSDF SOG)』の元最精鋭だった。
普段の佐藤は、お世辞にもカタブツの軍人には見えない。島民たちとお酒を飲んでは「いや~、うちの田舎の母ちゃんがさぁ!」と楽しそうに語り、アニーの誕生日BBQでも一番おしゃべりに盛り上がる、親しみやすい近所のお兄さんのような男だ。
だが、ひとたび戦場(仕事モード)に入ると、その空気は一変する。
ヘラヘラとした笑顔は消え去り、その瞳は「獲物を狙う獰猛な鷹」のような、冷徹極まりない光を宿す。東京決戦の際、上層部すらパニックになる中で単一の分隊を率い、目の前で空間が裏返る恐怖に直面しても一歩も退かずに生存者を回収し続けたその胆力は、まさに鷹そのものだった。
そしてもう一人。ドイツ連邦軍上等兵、クラウス・マイヤー。
彼はドイツが誇る対テロ特殊部隊『KSK(陸軍特殊戦コマンド)』に所属していた。
ステレオタイプな冷酷無比なドイツ人とは違い、クラウスは非常にフランクで陽気な「良い奴」だった。冗談が好きで、佐藤の軽口にも笑って合わせるナイスガイだ。
しかし、彼がKSKで数々の功績を上げてきた理由は、その陽気さの裏にある「絶対的な規律の遵守」だった。
どれほど戦況が混乱しようとも、軍人としての規律、命令、そして「仲間を見捨てない」という鉄のルールを絶対に破らない。東京決戦時、彼の日独合同特殊作戦チームは、東京の地下から噴出する最大規模の「淀み」を食い止めるための最前線に、文字通り最精鋭として国境を越えて派遣されていたのだ。
「佐藤、お前の作戦計画はいつも少し破天荒すぎる。規律に沿って、あと2パーセント生存率を上げるべきだ」
クラウスがシゲさんの形見のジッポでチェンが灯した火を見つめながら、フランクに肩をすくめる。
「硬いこと言うなよクラウス。戦場じゃあ、規律と同じくらい『野生の勘』がモノを言うんだよ。なぁ、マイク?」
佐藤が鷹の目を一瞬だけ緩め、いつものおしゃべりな顔でニカッと笑った。
この日独の最強の二人が、東京でハンスやエルザ、そしてリンを失った絶望の戦場で、たまたま一般人観光客のアントニオを救い出し、ヘリに滑り込んだ。そしてこの島で15年間、マイクたちと共に、牙を研ぎ続けてきたのだ。
「いつでも行けるぞ。佐藤、クラウス。あの時の、東京の借りを返しに行こう」
マイクがシゲさんのライフルをガシャリと引く。
特殊作戦群の鷹・佐藤。KSKの鉄の規律・クラウス。そして整備リーダーのアントニオ。
彼らという最強のピースが揃ったことで、人類の反撃の灯火は圧倒するほどの熱い輝きを放ち始めていた。




