孤高のバリア
彼らが命からがら辿り着いたのは、太平洋の遥か彼方に浮かぶ、名もない小さな離島だった。
ヘリが不時着し、一同がバタバタと浜辺の砂に倒れ込む。
東京を覆っていた不気味な紫色の雲はここにはなく、見上げる空には、遮るもののない強烈な「太陽の光」が降り注いでいた。そして周囲は、何百キロメートルにもわたって100%の「海(水)」に囲まれている。
ウラモドシの怪物の弱点である「質量と密度の塊」が、天然の巨大なバリアとなって島全体を包み込んでいた。グレーの霧は、この海を越えてくることはできない。日本の安全地帯だった。
「……助かった、のか?」
砂まみれになりながら、マイクが呆然と呟く。
隣では、救助されたイタリア人観光客のアントニオが、海の水を顔にバシャバシャと浴びせながら、大粒の涙を流して笑っていた。
「生きている……グラッツェ(ありがとう)、本当にありがとう……!」
アントニオは泣きながら、助けてくれた佐藤陸曹とクラウス上等兵の泥だらけの手を何度も握りしめた。ただの観光客だった男は、この恩を返すため、これからの15年間、島の船やヘリを文字通り「全責任を持って整備する最高のリーダー」へと血の滲むような努力で変貌を遂げていくことになる。
島民たちを含めても、生き残った人類はわずか数十人。
水平線の向こうで赤く不気味に光る、滅んだ祖国の方向を見つめながら、マイクは幼いアニーを抱きしめた。
「終わらせる。俺たちの代で、絶対にあの化け物どもをブチ殺す」
チェンは無言のまま、リンの形見の髪飾りを握りしめて海を見つめていた。
太陽の光が残酷なほど美しく輝く離島で、人類の長い、15年間にわたる「逆襲への牙」が静かに研がれ始めた。




