↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
19/33

東京壊滅 泥々の救出劇

「総員退避! 防衛線は崩壊した! ヘリへ走れ!!」

ジョージが叫ぶが、その声は空間が引き裂かれる狂った重低音にかき消された。

東京駅の駅舎は完全に反転し、アスファルトからは「後ろ向きに四足歩行する異形」がボコボコと湧き出している。人工雨(レイン・メイカー)の装置も破壊され、人類の敗北は決定的一変だった。

激しい大雨とグレーの霧が視界を遮る中、マイクは泣き叫ぶ幼いアニーを抱きしめ、チェンとエミリーの腕を引いて、崩落する地下街の階段を必死に駆け上がっていた。

その時、東京駅の丸の内口改札のすぐ近くで、凄まじい銃声と罵声が響いた。

「クソが! 弾が後ろ向きに跳ね返ってきやがる! 撃つな、白兵戦だ!」

叫んだのは、日独共同研究チームの護衛を務めていた、ドイツ連邦軍のクラウス上等兵だった。彼の隣では、陸上自衛隊の佐藤一等陸曹が、銃身に雨水を無理やりぶっかけながら、迫り来る粘菌の化け物を泥臭く殴り飛ばしている。この二人が、のちに15年間マイクたちを支え続ける「日独の軍人2人」だった。

「おい、そこの一般人! 突っ立ってると裏返されるぞ、こっちに来い!」

佐藤陸曹が怒鳴った先には、あまりの恐怖に腰を抜かし、石畳の上でガタガタと震えている小太りの男がいた。

彼の名はアントニオ。ただの観光旅行で日本にやってきて、たまたま東京駅でこの宇宙的災厄に巻き込まれただけの、純度100%のイタリア人観光客だった。

「マンマ・ミーア! 助けてくれ! 奴ら、後ろ向きに走って、顔が、顔が裏返って……!」

「喋るな、走れ!」

クラウス上等兵がアントニオの襟首を強引にひったくり、ラグビーのボールのように小脇に抱えて爆走し始めた。

背後からは、肉体が裏返り、食道を引きずりながら「逆立ちで走る異形の家族」が猛烈な速度で迫ってくる。佐藤陸曹は咄嗟に、シゲさんから投げ渡されたセブンスターのタバコに火をつけ、その煙を異形の顔面に吹きかけた。

「ギャあああ!」と怯む化け物。

「マイク! チェン! 早くヘリに乗れぇ!」

シゲさんがローターの爆音を響かせる軍用ヘリのハッチを開け、必死に手を伸ばしている。

マイクがアニーとエミリーを機内へ押し込み、最愛のリンを失って半狂乱のチェンをジョージの従兄弟が強引に引きずり込んだ。

そこへ、アントニオを抱えたクラウス上等兵と、殿(しんがり)を務めた佐藤陸曹が、滑り込むようにしてヘリの床へ転がり込んできた。

バババババババババッ!!!

ヘリは東京駅の屋上から、間一髪のところで急上昇した。

窓の外を見下ろすと、かつての大都会・東京は、空間そのものが巨大な球体へと圧縮され、どす黒いグレーの霧の中に完全に沈んでいくところだった。

ハンス、エルザ、そしてリン……。大切な仲間たちの命を東京に置き去りにしたまま、ヘリは燃料の続く限り南へと飛んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。