↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
13/33

ウラモドシの群れ

宿に戻ると、幸いにもエミリー、リン、エルザの三人は無事だった。しかし、宿の周囲の空気は、昼間だというのに夜のように薄暗く、あの冷凍庫のような異様な寒気が満ち始めていた。

「ここにいちゃ全滅する。荷物をまとめて車に乗れ! 麓の公民館へ逃げ込むぞ!」

シゲさんの指示のもと、一同はシゲさんの古い軽ワゴン車にギリギリで全員乗り込み、猛吹雪が吹き荒れ始めた雪道を猛スピードで駆け下りた。運転席のシゲさんは、口に咥えたセブンスターの煙を激しく吐き出している。

だが、山の中腹まで差し掛かった時だった。

車のヘッドライトの光の中に、信じられない「異形」が浮かび上がった。

道路の真ん中に、一人の女が立っている。

だが、その腰から下には、人間の足が十数本も、ムカデのように歪に生え揃っていた・・・・・・・・・・・・。

それぞれの足が異なる年代の、異なる靴を履いた、おぞましい「多足の女」。

「うわああああああーーーっ!?」

シゲさんが急ブレーキを踏み、ハンドルを切った。しかし、凍りついた雪道で車は制御を失い、激しくスピンしながら道路脇の雪溜まりへと横転した。

ガシャーーーン!!!

激しい衝撃と悲鳴。

幸い、深い雪がクッションとなり全員命に別状はなかったが、車は完全に沈み、ドアが歪んで開かない。マイクは必死に窓ガラスを蹴り破り、大きなお腹を抱えるエミリーを、チェンやハンスと協力して車外へと引っ張り出した。

「ハァ、ハァ……みんな、大丈夫か!?」

マイクが周囲を見回した瞬間、凍りつくような恐怖が一同を支配した。

猛吹雪の向こうから、ライトの光に導かれるように、次々と「それ」が姿を現したのだ。

「顔が裏返り、食道と内臓が外側に露出した男」

「四つん這いで、両足と両手を逆関節に折り曲げて逆立ちで爆走してくる女」

「足の裏に、生々しい人間の顔が張り付いてすすり泣いている少女」

それは、かつてこの山でウラモドシに呑み込まれたであろう、哀れな「異形の家族」たちの群れだった。彼らは全員が「後ろ向き」に動きながら、恐ろしい速度でマイクたちを包囲していく。

「チッ、数が多いな! チェン、マイク、ハンス! 走れ! 走って公民館へ逃げ込めぇ!」

シゲさんがライフルを異形の家族へ向けて連射する。チェンもリンを背中に庇いながら、落ちていた頑丈な木の枝を拾って構えた。

水はなく、太陽も届かない。この極寒の地獄で、マイクたちはエミリーのお腹の新しい命を守るため、決死の徒歩での逃亡戦を開始するのだった――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。