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第五十九話 戦国時代に転生した理由を、ようやく理解した気がした
ある夕方。
俺は店の前に座っていた。
街道を荷車が通る。
商人たちが挨拶を交わす。
子供たちが学校から帰ってくる。
市場では、人々が買い物をしている。
平和な光景だった。
俺は思い出した。
この世界に来た日のことを。
所持金は、わずか十二文。
刀もない。
武術もできない。
戦国大名の名前を聞いただけで、震えていた。
それが、どうだ。
織田信長と話した。
武田信玄と商売した。
上杉謙信と交易した。
明智光秀の借金を調べた。
もう一人の転生者とも戦った。
いや。
戦ったというより、商売をした。
俺は笑った。
「……本当に、変な人生だったな」
その時。
一人の少年が店に来た。
「おじいさん!」
「はい」
「米を一升ください!」
俺は立ち上がった。
「はいよ」
米を量る。
袋に入れる。
代金を受け取る。
少年が笑った。
「ありがとう!」
「こちらこそ」
少年は走って帰っていった。
俺はその背中を見つめた。
「……これでいいんだよな」
天下統一。
そんな大きなことを考えていた。
だが、結局。
俺がやりたかったのは、こういうことだったのかもしれない。
必要なものを。
必要な人へ。
必要な時に届ける。
ただ、それだけ。
俺は店の暖簾を下ろした。
「……今日も、いい商売だった」




