第五十四話 戦国時代に生まれた子供たちが、戦争を知らなくなり始めた
さらに十年が過ぎた。
天下商業連合は、各地の商人によって運営されていた。
俺は、すでに代表ではない。
だが、時々相談を受けることはあった。
ある日。
学校を訪れた。
子供たちが算盤を使っている。
「三俵の米を買って、五俵売ったら?」
教師が尋ねる。
「二俵増えます!」
子供たちが元気に答えた。
俺は笑った。
その時、一人の少年が手を上げた。
「先生!」
「はい」
「戦争って、何ですか?」
教室が静かになった。
教師が少し困った顔をした。
俺は少年に尋ねた。
「どうして知りたいんです?」
少年は答えた。
「おじいちゃんが、昔は戦争ばかりだったって言うんです」
「……そうですね」
「でも、どうして戦争するんですか?」
俺は考えた。
領土。
権力。
資源。
名誉。
恐怖。
さまざまな理由がある。
だが、子供にどう説明すればいいだろう。
俺は静かに答えた。
「昔は、欲しいものを手に入れるために、戦う人がたくさんいたんです」
少年が首を傾げた。
「……買えばいいのに?」
俺は固まった。
そして、笑った。
「……そうですね」
少年は続けた。
「商売した方がいいですよね?」
俺は頷いた。
「そう思います」
もちろん、商売だけですべての争いがなくなるわけではない。
だが、少なくとも。
この子供たちは、戦争以外の方法を知っている。
それだけでも、俺がこの時代に来た意味はあったのかもしれない。




