第五十一話 天下商業連合を手放したら、商人たちが怒り始めた
「代表を辞める?」
源兵衛が固まった。
「はい」
俺は頷いた。
「そろそろ、次の代表を選ぶ時期です」
「何を言っているんですか!」
源兵衛は珍しく声を荒らげた。
「天下商業連合を作ったのは、新太郎さんですよ!」
「そうですね」
「全国の商人が、あなたを信頼しているんです!」
「ありがたいことです」
「それなのに、辞めるなんて!」
俺は少し考えた。
そして、静かに言った。
「源兵衛さん」
「……はい」
「もし明日、私が死んだらどうなります?」
源兵衛は黙った。
「……そんな縁起でもないことを」
「ですが、いつかは起こります」
俺は続けた。
「私一人がいなければ動かない組織では、困るんです」
源兵衛は俯いた。
俺は笑った。
「だから、今のうちに次の世代へ渡します」
数日後。
各地の商人代表を集めた。
俺は壇上に立った。
「皆さん。本日、私は天下商業連合の代表を退くことを提案します」
会場がざわめいた。
「何だと!?」
「なぜだ!」
「新太郎さんがいなければ困る!」
俺は手を上げた。
「皆さん」
会場が静かになった。
「私は、天下を一人で支配するために、この組織を作ったわけではありません」
商人たちが黙った。
「誰もが安心して商売できる仕組みを作りたかったのです」
俺は続けた。
「だから、この組織は皆さんのものです」
長い沈黙。
そして、一人の商人が立ち上がった。
「……分かった」
別の商人も頷いた。
「確かに、その通りだ」
こうして、天下商業連合は、代表を選挙で選ぶ仕組みへ移行することになった。
ただし、俺の引退は、まだ認められなかった。
「新太郎さん」
源兵衛が笑った。
「次の代表が決まるまでは、働いてくださいね」
俺はため息をついた。
「……ですよね」




