第四十九話 全国の商人が戦争を止めたので、俺は初めて勝利を実感した
ある年。
二つの領地の間で、戦争が起きそうになった。
原因は、川の利用権だった。
川は、農業用水にも使われる。
船の輸送にも使われる。
どちらの領地にとっても重要だった。
「新太郎さん!」
源兵衛が報告した。
「双方が兵を集めています!」
俺は地図を見た。
「……困りましたね」
戦争になれば、川の物流が止まる。
周辺の商人も困る。
俺は天下商業連合の代表たちを集めた。
「どうしましょう?」
一人が尋ねた。
俺は答えた。
「双方に、共同管理を提案します」
「共同管理?」
「はい」
川の利用時間。
船の通行料。
用水の配分。
維持管理費。
それらを協議で決める。
「……大名たちが応じますか?」
「分かりません」
俺は答えた。
「ですが、戦争するより得だと示せば、可能性はあります」
交渉は難航した。
怒鳴り声も飛んだ。
双方が譲らなかった。
だが、商人たちは諦めなかった。
川が使えなくなれば、全員が困るからだ。
数週間後。
ようやく協定が結ばれた。
兵は引き揚げた。
川には、再び船が行き交うようになった。
俺はその光景を見つめた。
「……よかった」
源兵衛が笑った。
「新太郎さん」
「はい」
「戦争を止めましたね」
俺は頷いた。
「……そうですね」
その時、初めて実感した。
俺が作りたかったものは、これだったのだ。




