第四十八話 信長が天下を取ったと言うので、商人として反論してみた
岐阜城。
信長は地図を見ていた。
「新太郎」
「はい」
「わしの勢力は、ここまで広がった」
信長が地図を指した。
俺は頷いた。
「見事ですね」
「天下も近い」
「そうですね」
信長は笑った。
「お前の天下はどうだ?」
俺は別の地図を広げた。
「こちらです」
そこには、全国の交易路が描かれていた。
信長の勢力圏より、はるかに広い。
信長は黙った。
「……お前」
「はい」
「また、わしより広いではないか」
俺は笑った。
「商売ですから」
信長は苦笑した。
「まったく……」
そして、真顔になった。
「だが、新太郎」
「はい」
「商売だけで、国は守れるか?」
俺は首を振った。
「守れません」
信長は驚いた。
「……ほう」
俺は続けた。
「治安を守る人間が必要です」
「うむ」
「法律も必要です」
「うむ」
「争いを裁く仕組みも必要です」
信長は頷いた。
「分かっておるではないか」
俺は笑った。
「ですから、殿の仕事も必要なのです」
信長はしばらく黙った。
そして、大笑いした。
「はははは!」
「殿?」
「新太郎!」
信長は笑いながら言った。
「お前は、わしを商会の用心棒にするつもりか!」
俺は慌てた。
「いえ、そういう意味では……」
「はははは!」
信長は笑い続けた。
俺も、つられて笑った。
武力と経済。
どちらか一つだけでは、天下は成り立たない。
そのことを、俺たちは少しずつ理解し始めていた。




