第四十六話 学校を作ったら、農民の子供が商人になり始めた
最初の学校は、尾張に作った。
小さな建物だった。
机。
筆。
紙。
算盤。
教えるのは、読み書きと計算。
商売の基本。
そして、約束を守ることの大切さ。
最初の生徒は、わずか十二人だった。
農民の子供。
職人の子供。
商人の子供。
さまざまな身分の子供たちが集まった。
ある日。
一人の少年が俺に尋ねた。
「先生」
「はい」
「僕も商人になれますか?」
俺は笑った。
「もちろんです」
「でも、父ちゃんは農民です」
「それがどうしました?」
少年は驚いた。
「……いいんですか?」
俺は頷いた。
「商売に必要なのは、考える力と信用です」
少年は目を輝かせた。
「じゃあ、僕も商人になります!」
俺は笑った。
「楽しみにしています」
数年後。
その少年は、商会の帳簿係になった。
さらに、別の生徒は運送業を始めた。
また別の生徒は、農具の販売を始めた。
学校は少しずつ増えていった。
尾張。
美濃。
近江。
堺。
甲斐。
越後。
俺は学校の報告書を見つめた。
「……いいですね」
源兵衛が尋ねた。
「何がです?」
「商売をする人が増えています」
「はい」
「しかも、私が直接教えなくても」
源兵衛は笑った。
「新太郎さんの仕組みが、勝手に広がっていますね」
俺は頷いた。
「それが理想です」
俺一人がいなくても続く仕組み。
それこそが、本当に強い商会だ。




