第三十七話 米を買い占めた商人が困っているので、倉庫を貸してあげた
黒田商会の倉庫が足りなくなった。
大量に買い集めた米。
売れ残った米。
さらに、次々に届く米。
保管場所が不足していた。
そんな時。
黒田から使者が来た。
「倉庫を貸してほしい」
源兵衛が驚いた。
「敵ですよ!?」
俺は頷いた。
「そうですね」
「断りますよね?」
「貸しましょう」
「……ええ!?」
俺は笑った。
「商売ですから」
もちろん、条件は付けた。
倉庫代は前払い。
保管数量を記録する。
期限を過ぎれば追加料金。
米の品質については、預ける側が責任を持つ。
黒田は契約書を見て笑った。
「……随分と強気ですね」
俺は答えた。
「倉庫が足りないのでしょう?」
黒田は黙った。
「……いいでしょう」
こうして、黒田商会の米が、俺の倉庫に運び込まれた。
源兵衛が小声で尋ねた。
「新太郎さん、本当にいいんですか?」
「はい」
「敵の米ですよ?」
「米に敵味方はありません」
俺は笑った。
「それに、黒田が大量に米を持っていることは、もう市場の皆が知っています」
「……それが?」
「黒田が米を売り始めた時、値段が下がる可能性があります」
源兵衛が頷いた。
「なるほど」
俺は続けた。
「その時に備えて、こちらは資金を残しておきます」
黒田は米を持っている。
俺は現金を持っている。
どちらが有利になるかは、これからの市場次第だった。




