第二十九話 戦国大名たちが、戦争より商売を選び始めた
さらに数年が過ぎた。
天下商業連合は、大きくなっていた。
全国の主要な商業都市。
街道。
港。
倉庫。
金融。
多くの商人が参加している。
そして、領主たちも変わり始めていた。
ある領主は、戦争の準備を延期して街道を整備した。
別の領主は、関所の通行料を下げた。
さらに別の領主は、市場を開いて商人を集めた。
もちろん、戦争がなくなったわけではない。
領土争いも続いている。
だが、以前とは違うことがあった。
「戦争をする前に、交易への影響を考える」
そんな領主が増え始めたのだ。
ある日。
俺のところへ、一人の使者が来た。
「佐倉殿」
「はい」
「我が殿が、隣国との争いを収めたいと申しております」
「……そうですか」
「交易協定を結びたいのです」
俺は笑った。
「喜んでお手伝いします」
その後も、同じような依頼が続いた。
領地を奪うのではなく、交易を広げる。
戦争で利益を得るのではなく、商売で利益を得る。
そんな考え方が、少しずつ広がっていた。
俺は地図を見つめた。
全国の交易路が、線で結ばれている。
尾張。
美濃。
近江。
京。
堺。
甲斐。
越後。
駿河。
伊勢。
そして、その先の地域。
「……もう少しだな」
源兵衛が尋ねた。
「何がです?」
俺は笑った。
「天下統一です」
源兵衛は地図を見た。
「……でも、新太郎さん」
「はい?」
「まだ国は一つになっていませんよ?」
俺は頷いた。
「そうですね」
「では、なぜ天下統一なんです?」
俺は答えた。
「国境があっても、人と物と金が自由に動けるようになれば、経済は一つになります」
源兵衛は考え込んだ。
「……なるほど」
俺は笑った。
「私が目指しているのは、城を一つにする天下統一ではありません」
「では?」
「人々の暮らしを、一つにつなぐ天下統一です」




