第二十一話 全国共通の帳簿を作ったら、商人たちが大騒ぎになった
俺は各地の商人を集めた。
「今日から、帳簿の書き方を統一します」
商人たちは顔を見合わせた。
「帳簿?」
「はい」
「そんなもの、店ごとに違うだろう」
「だから統一するんです」
俺は見本を示した。
商品名。
数量。
単価。
運賃。
手数料。
支払期限。
受取人。
「これを共通にします」
商人の一人が言った。
「何のためだ?」
「取引を簡単にするためです」
俺は説明した。
尾張の商人が、堺の商人へ商品を売る。
その時、帳簿の形式が違えば、確認に時間がかかる。
だが、同じ形式なら、すぐに内容を理解できる。
「……なるほど」
「さらに、取引番号を付けます」
「番号?」
「はい。同じ取引を二重に記録しないためです」
商人たちは興味を示した。
「それは便利だな」
「間違いが減る」
「遠方との取引にも使えるぞ」
こうして、共通帳簿が広がり始めた。
さらに俺は、商人たちに提案した。
「支払いの記録も統一しましょう」
「支払い?」
「はい。誰が、いつ、いくら払ったかを記録します」
「そんなことをして、何になる?」
「信用が見えるようになります」
俺は笑った。
「約束を守る商人には、もっと大きな商売を任せられます」
この仕組みは、想像以上に評判になった。
やがて、商人たちは俺の商会の記録を信用するようになった。
そして。
ある日。
一人の大名の使者がやってきた。
「佐倉殿」
「はい」
「国の財政を見ていただきたい」
俺は固まった。
「……財政?」
「はい」
「どこの国ですか?」
使者が答えた。
「相模でございます」
俺は頭を抱えた。
「……今度は国の帳簿か」




