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第二話 織田信長に兵糧の運び方を教えたら、なぜか軍議に呼ばれた

清洲城。

俺は広間の中央で正座していた。

目の前には、一人の男がいる。

織田信長。

まだ若い。

だが、その目つきは鋭かった。

「お前が、荷車をまとめている商人か」

「はい」

「名は?」

そういえば、この世界に来てから名前を名乗っていなかった。

「佐倉新太郎と申します」

前世と同じ名前だ。

信長は俺を見た。

「聞けば、お前は荷車の帰り道に荷物を積ませているそうだな」

「はい」

「それがどうした」

俺は少し考えた。

「殿。兵糧を運ぶ荷車は、帰りに何を積んでいますか?」

「何?」

「戦場へ米を運んだ荷車です」

信長が家臣を見る。

家臣が答えた。

「帰りは空でございます」

「では、無駄ですね」

広間が静まり返った。

「……無駄だと?」

「はい」

俺は床に指で線を引いた。

「例えば、百台の荷車で兵糧を運ぶとします」

「うむ」

「帰りに何も積まなければ、帰路の輸送能力が丸ごと無駄になります」

「それで?」

「帰りに木材、鉄、布、農産物などを運べば、輸送費の一部を回収できます」

信長が黙った。

俺は続けた。

「さらに、同じ道を使う商人の荷物をまとめれば、荷車の台数も減らせます」

「つまり?」

「同じ費用で、より多くの兵糧を運べます」

信長の目が変わった。

「……面白い」

俺は内心で安堵した。

どうやら、話は通じたらしい。

「では、もう一つ聞く」

信長が身を乗り出した。

「お前なら、兵糧をどこに置く?」

「戦場の近くです」

「当たり前だ」

「ただし、一か所には置きません」

「なぜだ?」

「敵に焼かれたら終わりだからです」

俺は床に三つの丸を描いた。

「複数の倉庫に分けます。さらに、どの倉庫に何俵あるかを記録します」

「……ほう」

「そして、古い米から使います」

「なぜだ?」

「腐るからです」

信長はしばらく黙っていた。

そして突然、笑い出した。

「はははは!」

家臣たちが驚く。

「面白い奴だ!」

信長は立ち上がった。

「お前、わしに仕えぬか?」

来た。

最も避けたかった展開だ。

「申し訳ありません」

「断るのか?」

「私は商人でございます」

信長の目が細くなった。

「商人が武士より偉いとでも?」

「いいえ」

俺は頭を下げた。

「ただ、商人だからこそできることがあります」

「ほう?」

「敵国とも商売ができます」

広間の空気が凍った。

信長が笑みを消す。

「……敵に米を売るつもりか?」

「敵が戦争をやめるなら、売ります」

「何?」

俺は顔を上げた。

「戦争をするより、商売をした方が儲かる。そんな国を作りたいのです」

信長は俺をじっと見つめた。

長い沈黙。

やがて

「……気に入った」

信長が笑った。

「好きに商売してみよ」

「ありがとうございます」

「ただし」

信長は続けた。

「わしの邪魔をしたら、容赦せぬぞ」

俺は冷や汗をかいた。

どうやら、最初の取引相手は、とんでもなく危険な男らしい。


その日の夕方。

城を出た俺に、一人の若い武士が声をかけた。

「佐倉殿」

「はい?」

「殿からの預かり物です」

渡されたのは、小さな袋だった。

中には銭が入っている。

「これは?」

「兵糧輸送の改善案に対する褒美です」

俺は袋を開けた。

思わず息を呑んだ。

今まで稼いだ金より、はるかに多い。

「……商売の元手ができた」

俺は笑った。

だが、その直後。

若い武士が言った。

「それと、殿からもう一つ」

「何でしょう?」

「一月後、兵糧輸送の成果を見せよとのことです」

「……え?」

「失敗すれば、二度と城には入れぬそうです」

俺は空を見上げた。

戦国時代。

商売をするだけでも、命懸けらしい。

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