第十八話 全国の商人をつないだら、戦国大名より情報が集まるようになった
堺との取引が始まったことで、商会の情報量は一気に増えた。
尾張。
美濃。
近江。
京。
堺。
甲斐。
越後。
各地の商人から、商品価格や在庫の情報が届く。
俺はそれらを帳簿にまとめた。
「……面白い」
源兵衛が尋ねた。
「何がです?」
「米の値段が上がっている地域があります」
「不作でしょうか?」
「その可能性もあります」
俺は別の帳簿を開いた。
「ですが、同じ地域で塩の注文も増えています」
「……何かあるんですか?」
「軍勢が動く準備かもしれません」
源兵衛が驚いた。
「そんなことまで分かるんですか!?」
「断定はできません」
俺は答えた。
「ただ、商品がどこへ動いているかを見れば、変化に気づけます」
商人は、情報を持っている。
米の値段。
塩の不足。
鉄の注文。
馬の売買。
布の需要。
それらを組み合わせれば、地域の状況が見えてくる。
数日後。
信長から呼び出しがあった。
「新太郎」
「はい」
「美濃で何か動きがあるか?」
俺は帳簿を開いた。
「米の取引量が増えています」
「ほう」
「ただし、軍事行動とは限りません」
信長は笑った。
「分かっておる」
そして言った。
「お前の商会は、下手な忍びより情報を持っているな」
俺は苦笑した。
「商売の情報ですから」
だが、その日の夜。
俺は気づいた。
情報を持つことは、力になる。
そして、力を持てば、必ず誰かが欲しがる。
俺の商会は、もはや単なる運送屋ではなくなっていた。




