第十四話 米が高騰したので、備蓄米を売ったら商人たちに恨まれた
「米が高い!」
市場では、人々が騒いでいた。
不作。
輸送の遅れ。
買い占め。
さまざまな要因が重なり、米価が上がっていた。
俺は帳簿を見た。
「……予想より早いな」
源兵衛が尋ねた。
「どうします?」
「備蓄米を出します」
「全部ですか?」
「いいえ」
俺は首を振った。
「必要な量を、段階的に出します」
備蓄には限りがある。
一度に全部売れば、次に不作が起きた時に困る。
俺は価格と在庫を確認しながら、市場へ米を供給した。
すると。
「米が入ってきたぞ!」
「値段が少し下がった!」
人々が喜んだ。
だが、喜ばない者もいた。
米を買い占めていた商人たちだ。
「佐倉め!」
「せっかく米が高く売れると思ったのに!」
「邪魔をしおって!」
数日後。
俺の店に、数人の商人が押しかけてきた。
「お前、米を売るのをやめろ!」
「なぜです?」
「値段が下がるだろう!」
「それは困りましたね」
俺は笑った。
「私も米を売る商人なので」
「ふざけるな!」
「ふざけていません」
俺は帳簿を開いた。
「私は、安い時に買って保管していた米を、今売っています」
「……何?」
「皆さんも同じことをすればよかったのでは?」
商人たちは黙った。
俺は続けた。
「ただし、私は米価が上がりすぎないように、少しずつ売っています」
「なぜだ!」
「米が買えなくなれば、町の人が困ります」
俺は静かに言った。
「人が飢えるほど値段を上げたら、商売そのものが続きません」
商人たちは何も言えなかった。
だが、その夜。
俺の商会に、ある噂が届いた。
「新太郎さん」
源兵衛が青い顔で言った。
「商人たちが、あなたを消そうとしているそうです」
俺はため息をついた。
「……戦わずに天下統一するつもりなのに、敵ばかり増えるな」




