第十三話 鉄砲より鍬を売ったら、信長が本気で驚いた
一年後。
尾張のある村では、農具の共同購入が始まっていた。
以前より安く鉄製の農具が手に入る。
壊れた農具の修理も、共同で頼める。
農民たちは喜んだ。
「新しい鍬は使いやすいな!」
「前より仕事が早い!」
「修理も安くなった!」
俺は村を訪れ、収穫量を調べた。
もちろん、農具だけで収穫が急増するわけではない。
天候。
水。
土。
種。
人手。
さまざまな要素がある。
だが、農作業の効率は確実に改善していた。
そして、余った時間を用水路の整備や畑の手入れに使う村も出てきた。
俺は帳簿を見た。
「……いい傾向だ」
その頃。
清洲城では、信長が報告を受けていた。
「農具の普及によって、耕作の進みが早くなった村があります」
家臣が言った。
「それだけか?」
「いえ。修理費も下がり、農民の負担が減っています」
信長は考え込んだ。
「……新太郎の仕業か」
「はい」
信長は笑った。
「鉄砲ではなく、鍬で国を強くするか」
そして、俺を呼び出した。
「新太郎」
「はい」
「お前、次は何をする?」
俺は答えた。
「倉庫を増やします」
「また倉庫か!」
「はい」
「なぜだ?」
「米が増えても、腐らせたら意味がありませんから」
信長はしばらく黙った。
そして、大笑いした。
「ははは! お前は本当に戦をしない男だな!」
俺は笑った。
「そのつもりです」
だが、その年。
周辺の地域で不作が起きた。
米の値段が急騰し始めたのだ。




