捜査の始まり
「もへじぃ~」
うしじの涎がちょうど私の頭にかかった時私は目を覚ました。今、何時だろ。
とりあえず、朝食を食べたい。でも、それ以前に何をどうしたらいいのかわからない。なにをすれば…。
その時だった。鍵をかけておいた飼育小屋の扉ががたがた言い出したのは。
何?地震?やだ。こわい。こんなところで地震なんて絶対に死ぬ。と思っていたら、ドアの軋む音が消えて、爆発した。
いや、爆発なんてしていなかった。
その証拠に煙も、木っ端みじんになっただろう扉も飛んでこなかった。
その代わりに、大きくへこんだ扉であったようなものが飛んできた。
そして、その奥には人影が見えていた。
なんだコイツ。あんなに頑丈な鍵をつけていた飼育小屋の扉を足蹴りで壊すなんて、化け物だろ。私が唖然としていると、その人はコツコツと近づいて、私の近くにあったなけなしの藁を消し飛ばした。いや、吹き飛ばしたのだ。
「サクラに言われてきたコンパーニュ・セヴェールよ。さっさと起きて、仕度しなさい。さっそく捜査に取り掛かってもらうわよ。」
「え?」
いや、なんのこと。まじで。
コンパーニュ・セヴェール?誰?その人?
あんなヤバいことをしておいて、一言目がこれ?
日野桜といい、コイツともいい、ヤバいんじゃないの?
あと、捜査?日野桜からはそんな話聞いてもいないよ。
聞いたのはあの校長先生の手となり足となって、雑務をすることだけだけど?
「まずは、その間抜け面をやめなさい。あと、なにそんな汚いの。」
額を手で覆って、はーっとため息をつくコンパーニュ・セヴェール。そんなこと言われても、あなたの知っている日野桜とか言うやつに何の説明もなしにこんな状況にされて、あなたの知っている校長先生の手配ミスによって私はこの謎の生物に囲まれて過ごしてたんですけど。
「まあ、その、色々とありまして…」
そうとしか返せなかった。
「とりあえず、ついてきなさい。まずは、お風呂に入ってもらうわよ。」
そこからの記憶はあまりない。コンパーニュ・セヴェールがあまりにも厳しいからだ。行動が止まってたらすぐにでも喝が飛んできて、こっちが疲れて休みたいっていうのに、あっちはそそくさと行ってしまう。追っかけているこっちの気持ちも考えてほしい。最終的に私の魂がようやく私の身体に帰って来た時にはお昼前くらいだった。
気づけば、私の身体にはいい香りが漂っていて、おしゃな服を身に着け、目の前には涎が出るようなおいしそうなご飯が並んでいた。現在の状況を理解していない私は不機嫌そうなコンパーニュ・セヴェールに聞いたところ、私は彼女の家にあるお風呂を借りて、今は学校の食堂に来ていることを初めて認識した。
「時間が無いから手短に済ませるわ。私は、コンパーニュ・セヴェ―ル。あなたと同い年の11歳。サクラの助手というか、補助、秘書的な立場よ。よろしく。」
コーラらしき黒い炭酸飲料をグイっと飲み、ぷはーって吐いた。お酒みたいに飲むなあ。
「どうせあのサクラから連れてこられた理由なんて聞いてないだろうから説明するわね。あなたには、この学校の外部の者としてとある事件を解決してほしいの。」
「え?昨日は校長先生の雑務をこなせと言われたんですけど。」
「それが事件の解決なのよ。」
「事件?」
「そう。連続殺人事件よ。もう3人亡くなってる。」
3人も⁉そんな犠牲者出てるの⁉一呼吸おいて、コンパーニュが説明し始めた。
「校長先生が始めは捜査してたんだけど、解決しなくってね。逆効果だったの。それで困った校長先生がサクラに捜査を依頼して、あなたが選ばれたってわけ。」
「え、でも、私何にもこの学校のことを知らないし…。そんな私推理力なんてないし。」
「だからこそよ。何にも知らないこそ。私たちにはない視点で見れる。とにかくつべこべ言わずに捜査に協力しなさい。サクラが選んだから拒否権はないわよ。」
というか、日野桜ってどういう立場なんだ?校長先生とあんなに仲がいいし、頼りにされるくらいなら、なんかいい立場にいるのか?でも、アイツ、私と同じ小学五年生だよね?よくわからない。
「日野桜ってなんか偉い人なの?」
「それは教えられないわ。」
コンパーニュの厳しい目がこっちに向けられる。
「何も言えないけど、一般人のあなたが気楽に付き合えるような仲ではないのは頭に入れておいて。あの人は、この学校で未入学者のはずなのに最優秀賞を毎年受賞している素晴らしい人なんだから。」
そんなことを言うコンパーニュは心の底から日野桜のことを尊敬しているようだった。
その様子が更に私の好奇心を刺激した。知りたい。日野桜のことを。これはチャンスだ。日野桜のことをコンパーニュがよく知ってるなら、聞きたせばいい。日野桜に関する全てを。
「とにもかくにも協力してもらうからね。ちゃんと力になりなさいよ。」
「わ、わかったって、ちょっと待って!!」
私がまだご飯を食べきってないのにコンパーニュはそそくさと食堂を出てしまった。
私は知らなかった。この事件はとてつもなく凶悪なものであると。




