エピローグ
エピローグ
深い、深い森の中。
「…それでどうするの?」
フリルが沢山付いた、パーティードレスのような衣装に身を包む、小柄で黒髪の女の子は、ぴょんっと跳ねるように体をゆらしながら、女性の前へと回る。
「今は様子見かしら?」
「うーん、マイはもう少し探りを入れたいって思うけど」
黒髪の女の子は、栗色の目をくりくりとさせながら、上目遣いで女性を見上げる。
「『―――』の存在を認知し、その力を借りた魔法を誰かが使った。秘匿された、力よ? もうすぐ千年になるけど、今までなかったこと」
女の子はぎゅっと自分の胸元に手を置く。
「よからぬ流れが見えて、少し苦しい。……これが胸騒ぎってものなの?」
女の子の声に、何か必死さを感じた女性は、女の子の頭を軽く撫でた。
「分かったわ。今は様子見とはするけど、放置じゃ無い。時が来たら、私自ら出る」
「…リーン、様」
女の子は、表情を和らげた。
「そのときは、あなたも動いて貰うわよ、マイ」
そして、力強く頷いた。
「御意に! マイノス・クランベール、そのときは、剣となり盾となりましょう!」
暗い、暗い闇の中。
「そうか、デュラスィスは滅んだか」
闇の中、声だけ響く。
闇に向かい、ローブの男は深々と頭を下げた。
「彼奴目の功労、称えましょう。封印のアミュレットを、ようやく回収することが叶いました故」
「うむ。報告は受けている」
「具申をお許しください。…ユニス王城ではもう何も見つけることはできないかと存じます。であれば、次の目標へと移るタイミングかと、そう思うところに存じますが…?」
ローブの男は、闇の存在を伺うように、冷や汗を流しながらそう述べた。ややあってから、闇が反応する。
「聞き入れよう。では、西のデヴィル・ドラゴンをうまく使うが良い」
その名を聞いたローブの男は、一瞬顔を引きつらせた。しかし主人として崇め敬愛する男にとっては、その言葉は絶対。深々と頭を下げ、了承するのだった。
「…御意に」
幕間
ラミアが旅に出たことで、メルの仕事は一旦区切りとなった。僅か一週間ほどの期間だったが、メルにとってラミアは、かけがえのない存在となった。感情を取り戻す切っ掛けになったことがまず大きい。そして、昔兄として慕っていた人物とは、性別も年齢も違うのに、同じようなものを感じてしまった。だから、お姉ちゃんと呼んでいいかと、思わず尋ねてしまった。ラミアは嫌な顔をせず、すぐに了承してくれたことが、とても嬉しかった。
「……はぁ、お姉ちゃん……」
メルは、顔を赤らめて呟く。
感情を取り戻して間のないメルは、様々な感情に振り回されている。ラミアの顔を思い出す度に、心臓を高鳴らせてしまう。これではまるで女の子に恋してるみたい、と考えてしまうが、何故かまんざらでもない、と考える自分もいる。昔からお兄ちゃん一筋だったはずなのに。
これは他人には相談しにくいなあ、とメルは独り言つ。
感情が落ち着いてから、改めていろいろなことを考えようと、メルは深呼吸した。したのだが。
「ラミア、お姉ちゃん」
真っ先に思い浮かべるのは、彼女の顔と姿だった。
名前を呼び、きゅん、と胸が躍る。
落ち着けるのは当分先になりそうだな、とメルは顔を赤らめながら、そう思うのだった。
第一ピリオド ~了~




