変わりゆく冒険者たち
「攻略法がわかったの。一緒に頑張りましょう!」とカスミに誘われ、同じ悪夢の攻略に乗り出すことになった。
元々私と一緒にチームを組んでいた2人もいたので、合計6人で進むことになったのだが、カスミの教えてくれた攻略法は、4人までしか使えないものだった。
マユとモモは脱出できず、あのスライムみたいな奴に殺された。
しかも、学校から脱出出来たはいいが、結局クリアじゃなかった。
最後はピンク色の虫みたい奴に食べられたし、最悪だった。
○○○
朝起きてケータイを確認すると、カスミから『これからの作戦を考えよう』と言うメールが来ていた。更には、チームを増やしてアイデアを募る方針、とも書いてあった。
カスミがリーダー振るのはいつものことだし、言うことを聞かないと癇癪を起こすから、わかった、とだけ返事を返してラジオ体操に向かった。
公園に行くと、マユとモモがすでにいた。
いつもなら私に寄って来て話しかけてくるのに、今日は私に話しかけて来ず、ちらっと見たりしながら距離を置いている。
ムカつく。
自分たちが死んだのは、私のせいじゃないし。アンタたちがグズだからだし。
逆恨みって奴じゃん。やめてよね。
私から話しかけたりはせずに、ラジオ体操が始まった。
体操が始まって少しして、ブス子の友達だったアイナが来た。
真面目タイプのくせに遅刻してくるとか。
真面目だけが取り柄のくせに。
何も良いところないじゃん。
相方のブス子の方は、1学期みんなでシカトしてたし、夏休みに入ってから1度もラジオ体操に出て来ていない。
引きこもりになったのかも知れない。
○○○
アイナはカスミからのメールが来ていなかったみたいで、ラジオ体操が終わったらすぐに消えた。
ブス子の友達だった奴が、役に立つとは思えないし、状況が状況なだけ足を引っ張られても困る。
1人で夢の中で殺され続けたら良い。
マユとモモは、ラジオ体操が終わった後も話しかけてこない。
だが、メールは来てたみたいで、私の後についてくる。
目的地は、同じ。
学校だ。
学校に着くと、カスミ、ホノカ、ノゾミがいた。3人とは別に男子も3人いる。斎藤くん、小林くん、野村くんのサッカークラブの男子だ。
そこに私、マユ、モモが合流する。
朝7時の校庭で、昨日の夢の攻略について話し合いになった。
○○○
「カーテンでロープを作る、か。思いつかなかったな」と小林くんが感心した顔で返事をする。
カスミの考えた脱出方法を共有する。
「でも、それだと4人までしか逃げれなかったわ」とカスミが言う。
そうだ。それのせいでマユとモモとの間の空気がギクシャクしている。
アンタが変なこと言わなければ良かったのに。
「ごめんね、マユちゃん、モモちゃん」とノゾミが謝る。
「いいけど」「次は先に行かせてよ」
と2人がボソボソ返事をしている。
いや、運動オンチのアンタらを先に行かせたら誰も助からないんですけど!高いところ怖い、とか言って竦むのが関の山でしょ!と言いたかったが、空気が読める私は、この場では言わなかった。
「マジかー。そうなるとあんまり大勢で組む意味ねぇな」
と斎藤くんが言う。
確かに9人で攻略しようとしても、4人までしかロープが使えないんじゃ意味がない。
「疑問に思ったんだけどさ。何で同じ夢を見れるんだろうな」
「わかんないけど、ヤバいよね」
「今こうやって話しちゃったってことは、今夜は9人で夢を見るの?」
「4人までしかロープ使えないのに?」
そこで話し合いが止まった。
みんな思っているのだ。自分はカーテンロープで脱出したい、と。
ハズレの5人にはなりたくない、と。
「発案者の私には、ロープ使う権利、あると思う」とカスミが言い出した。
「いや、そう言う話じゃないでしょ。みんなで助かる方法考えようよ」とホノカが答える。
ホノカがそう言ったのがトリガーになったのか、カスミがキレた。
何の役にも立ってないのに!だとか、皮膚科に行かなきゃいけないくらい追い詰められているんだから優先しろ、だとか喚いている。
こうなったら手がつけれない。
男子の方もドン引きなのがわかる。
結局建設的な話にはならず、カスミとホノカが喧嘩し、その仲裁で終わった。
また夢で会わなきゃいけないと思うと苦痛だった。
○○○
「えっ」
夢の教室には私1人だった。
マユもモモもいない。
それはいい。
カスミもホノカもノゾミもいない。
サッカークラブの男子もいない。
どうなってるのよ。
待てば来るの?
どれくらい待てばいいの?
待っている時間があるなら、ロープを作ってた方が良いの?
夢の話をしたら、夢の中でも一緒にいれるんじゃないの?何で私は1人なのよ!
1人でいたら何をしたら良いか分からなくなった。
そうこうしていたら、下校の放送が鳴った。
あのスライムが来る。
○○○
「おやおや。パーティが様変わりしたのぅ。現実世界で仲違いでもしたかな。共有が絶たれておる者がおるではないか」
アバドゥンがダンジョンを見ながら、そう呟く。
大半の者がパーティを組んでいる。
特に目立つのは、サッカークラブの少年たちのパーティにホノカとノゾミ、マユとモモという少女たちが加わり、7人になったパーティだ。
男子のパーティはほとんどが4人であり、1パーティだけが3人パーティだ。
そして、その男子パーティの全てがカーテンロープでの校舎脱出を達成した。
現実世界で、男子の間での攻略情報の伝達があった証拠であろう。
夢の共有によるパーティ結成に至らないのは、直接の情報交換ではなく、手紙やメールによる物だからか。
単独冒険者は、担任の教師、1番クリアに近いであろうアイナという少女、後は多人数からの“追放”を受けたのか昨日まで3人パーティのリーダーを張っていたカスミという少女と、今アシナガサマに溶かされていっているマリという少女の4人だけになった。
「教師はパーティを組むのは難しいであろうな。だが、チョークでアシナガサマを撃退したか。他にも重曹やチョークに気づいたパーティが出始めておるのぅ。うむ。少しずつであるが、攻略が進んでおる。そうでなくてはな。停滞していては面白味に欠けると言うものよ」




