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いじめられっ子ダンジョン  作者: センチメンタルアスパラガス
冒険者をやっつけよう
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アイナの冒険2

誤字報告ありがとうございました


「これ、無かったらどうなってたのかしら」



私は、手に持っている“鬼のようになってしまったお地蔵さんの首”を、口から火を吹いている小鬼の前に突き出していた。


そうすると、先程まで敵意を剥き出しにしていた小鬼たちは、私に手を擦り合わせるように拝み出した。



まるでお地蔵さんに拝むように。



小鬼たちがスペースを空け、私から首なしの石像までの道が出来る。

そこに持って行って欲しい、というのは言われなくても分かった。


小鬼の道を歩くと、両サイドの小鬼たちが平伏して拝んでいる。


前を見ると、指を首なし像に向け平伏している小鬼がいる。


「ここに置けば良いのね?」

首を首なしのあるべき場所に置く。



ピッタリとハマった首は、外れることなくくっつき、見事な邪神像へ変わった。

禍々しいオーラも漂い始めた。


すると、小鬼たちは我先にと石像に縋り、拝み出した。

私にはもう興味無しという感じに、だ。



私は、小鬼の隙間を、足が当たらないように抜けて行った。



急に気分を変えて、追いかけて来たりしないか確認しながら距離をとったが、小鬼は誰も追いかけては来なかった。


つまり、あの小鬼は障害物(なぞとき)の1つに過ぎなかったのだろう。


首を元に戻したら終わりだと思っていたが、どうも違ったようだ。


となると自分の家に帰りつくことが、クリアの条件だろうか。



ただ、“もう一つ”クリア条件なんじゃないかな、と考えているものがある。



もし、自分の家に帰ることがクリア条件じゃなかったら、そっちを目指して動くことにしよう。



○○○



「1週間お世話になりました」


「うん、また来ちょくれよ」

「いつでも待っちょんけんね」


私は、おばあちゃんとおじいちゃんに見送られ、特急列車に乗った。


祖父母の住んでいる県には新幹線が走っていない。なので特急列車で最寄りの新幹線の停車駅に行き、そこで乗り換える。



楽しかった1週間。

宿題もだいたい終わった。

後は日記と自由研究だけだ。


空いている席に座り、おばあちゃんからもらったベビーカステラを食べようとした時だった。



「メイちゃん、同じ列車やったか」


私の座席の斜め前に、おばあちゃんちに来たお坊さんが座っていた。


何でいるのか、よりも何で私と分かったのか、が気になった。



「メイちゃんは、漂っちょるもんが違うからすぐ分かるとよ」


「そうなんですか?」


「そうなんよ」


周りの人が気を利かせてくれ、私とお坊さんは隣同士の席になった。


話を聞いているわかったのだが、お坊さんも私と同じ新幹線に乗るらしい。

更に、乗る目的は『私の周りの呪いのようなものが気になるらしく、私の父や母がどうなっているのか見てみたいから』らしい。


おじいちゃんおばあちゃんからも了承を得て、両親にも電話しているとのこと。


行く日が被ったのは、完全なる偶然なのだそうだ。



「旅は道連れ。よろしくな、メイちゃん」



○○○



「家には帰れない、か」


私の家の方角の道路は途中で途切れ、目の前には霧に包まれた沼が広がっている。

足を踏み入れれば、過去の例に漏れず捕食されるだろう。



つまり、クリア条件は自宅に帰ることじゃない、と言うことだ。



「なら別のプランよね。“ゴールかも知れない場所”は、公園を通って......あっダメだ。道路じゃないから迂回しなきゃ。なら、お堂から曲がって、大通りの歩道橋を渡れば良いから......」



私は、歩きながら考える。


兄さんが、『夢は本人の深層心理を写す』と言っていた。


深層心理。


1学期の間、ずっと迷っていたこと。

罪悪感。自罰心。


それが、こんな悪夢の迷路みたいな形で現れるなんて。



「きっと“謝りに行かなきゃ”って思いが作った夢なんだろうなぁ。目が覚めたら、謝りに行かなきゃ。ごめんね、メイちゃん」



そんなことを考えながら歩く。

朽ち果てたお堂のある小道を通りかかっていた時、後ろから校舎の中で聞いた不快な音が近寄ってくるのを感じとった。


振り返るとそこには



○○○



ゴールに辿り着くことは出来なかった。


まさかお堂に、“学校にいたアイツ”と同じのがいるとは思わなかった。


学校で重曹を全部使ってしまったので、対抗手段がなかったのだ。


次は、重曹の配分を考えなくてはいけない。



ノックの音の後、兄さんが部屋に入ってくる。「どうだった?」と私に聞いてくる。



「惜しいところまで行けた。でも本当のクリア条件は夢の中には無さそう」と答える。


「そっか。どうするの?」


「メイちゃんの好きなカステラを買おうと思うからお金貸して」


「そっか。分かった」



○○○



新幹線に乗り換えて、自由席でお坊さんとおしゃべりをしていたら、あっという間に降りる駅に着いた。



「お坊さんはどうするの?」


「メイちゃんのパパとママに会った後、ちょっーと観光したら、駅前のホテルに泊まって、明日帰るよ」


「弾丸ツアーね」


「そうだね、かなりハードなスケジュールなんだよ。......ん?なんじゃありゃ」


お坊さんの顔が急に険しくなる。



見ている方を見ると、新幹線の改札口だ。


そして、その改札口の前には文明堂の紙袋を持ったアイナちゃんがいる。



私と目が合うと、気まずそうな顔をしながらも目を逸らさずに、ずっとこっちを見ている。



改札口を抜けると、アイナちゃんは私のすぐ近くにやって来て、勢いよく頭を下げた。



「メイちゃん。本当にごめんなさい。許してもらえると思えないけど、謝らせて欲しいの」


おおう!?


そう言って私にカステラの入った袋を渡して来た。



「1学期の間、無視してごめんなさい。お前も巻き込むって言われて断れなくて、メイちゃんを見捨ててごめんなさい。都合のいいように謝ってくるような人間だと軽蔑してると思うし、軽蔑されても仕方がないとも分かってる。でも謝らせて欲しい。本当にごめんなさい」


アイナちゃんに涙ながらの謝罪を受ける。



改札口の前で。



周りからは、何事だろうと、視線を浴びまくっている。



お坊さんは、離れたところから私たちを見ている。逃げるな。



まぁ、アイナちゃんに関しては、一度夢を覗いた時に許すのを決めていた。


それに初めて使う呪文の性能も確かめたい。



「顔を上げてアイナちゃん。アナタノシャザイヲウケイレマスから」

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