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いじめられっ子ダンジョン  作者: センチメンタルアスパラガス
冒険者をやっつけよう
11/38

解呪の呪文

誤字報告ありがとうございました


拙僧は、生まれながらに“異界の産物”を目で見ることができる。


それは、呪いや祟り、霊障といった、漂っているだけで人身に災いを為すものだ。


それを幼少の身分より見てきた拙僧に、父は「お前は良い僧になる」と太鼓判を押してくれた。



なので、我が正光寺は、危ないものを預かり、倉へ封印する“邪鬼封じの寺”として有名になった。


髪の伸びる人形、ひとりかくれんぼで使われたぬいぐるみ、座ると死ぬ椅子、などなど。

我が寺の倉は、呪具の万博博覧会の様相を呈し、いずれもが、刺々しく、禍々しいモノを醸していた。



檀家への挨拶回りは拙僧の日課であった。


法人というだけでは、もう寺は成り立たない。同じ宗派の知人は、保育園を併設し、何とか運営している。


が、子どもの少ない地域の我が寺に於いては、その手は使えない。


時代に合わせ、ネットを利用し、呪いや祟りの物品を鑑定し、本物で有れば預かる仕事を始めた。


後は趣味の精進料理を振る舞うこととし、SNS映えする寺という位置に立つことが出来た。


俗過ぎるとも言われたが、それにより得た僅かな寄進で何とか運営しているのだ。



後は、檀家から見捨てられぬよう、挨拶回りをし、その拙僧の目で分かる妙なものが有れば、注意を促し、町内安全に貢献していたのだ。



○○○



四辻さんちの子どもが帰って来ている、と聞いた。


今は一ノ宮と姓が変わったが、拙僧の初恋の人の娘さんが来るとならば、挨拶をして置かねばならない。


1年前にあった時は、小学校の時の四辻さんに瓜二つに成長していたので、驚いたものだった。



だが、今年も驚かされた。


まさか、異界の産物を身に纏う姿を見せつけられるとは思わなかった。


しかし、本人はケロっとした顔をしているし、何よりも刺々しさがない。


何なのかは分からなかったが、もしかすると強い守護霊のようなものが憑いているのかもしれない、と拙僧は考えた。


宗教は異なるが、荒御魂が目に映るとこう見えるのかも知れない。



では四辻さんは大丈夫なのだろうか?


旧知の者に異変があれば、後味が悪い。


手は出せぬとも警告は出来る。



拙僧の性分を知る四辻さんに、事のあらましを伝え、出立の準備をしたのであった。



○○○



新幹線の車内で出会ったのは、偶然であった。だが、その身に纏うもので誰かはすぐに分かった。


拙僧も彼女の旅路に同行するとした。


行き先が同じであることを伝えると、良い時間潰しが出来たと言う表情となった彼女とあっという間の列車旅を楽しんだ。



楽しい移動時間の終わりに、新幹線停車駅の改札口に、どす黒く禍々しいモノがいた。


人に絡みつき、皮膚を焼き、足に喰い込むソレは正に、呪いの一言に尽きるものであった。



それが、改札口の向こうに待ち構えている。



拙僧は彼女(メイ)に警告をするが、それよりも先に彼女(メイ)は、呪いを纏う者へ近づいて行った。



拙僧は耐えられない。


吐き気を催す邪悪。


魂を蝕む瘴気。



遠巻きに彼女らを見守っていた。



しかし、ある瞬間、霧が晴れるように呪いは霧散し、そこには泣きながら謝る少女の姿があった。


少女の手足には包帯やガーゼ、絆創膏があり、呪いが肉体を蝕んでいたのが分かる。



呪いを解いたのであろうか、彼女(メイ)が。



○○○



泣く少女が目立つので、彼女(メイ)と拙僧は、歩きながら話を聞いた。



1学期の間、いじめに加担していたこと。


いじめに加担しながらも罪悪感を感じていたこと。


夏休みに入ってから、同じ悪夢を見るようになり、そこで死ぬと肉体にも怪我があること。


言葉で謝るべきだと、彼女の家に行ったが祖父母の家に行っていたのが、今日帰省すると聞き、昼からずっと駅で待っていたこと。


謝って許してもらえたら、身体が軽くなったこと。



「うむ。確かにお嬢ちゃんの周りの呪いは消えちょるからなぁ。軽くなったっちゅうのも分かる」


「呪い?消えた?」


「どういうことなんですか?お坊さん」


2人の少女から矢継早に質問にあう。



謝ってた後、身に纏っていた呪いが消え去ったのが見えたのだ、と拙僧は答えた。


メイの方は「ほう」と訝しげに拙僧を見ているが、アイナという少女の方は「なら、あの夢はもう見なくなるかも知れないんですか?」と聞いてきた。


はっきりとは分からないが、続く悪夢が呪いによるものであるならば、もう見ないのではないか、と伝えた。



「罪悪感が、自分に呪いをかけることがあるんですかね」


「それは分からんが、そうなのかも知れんな」



○○○



「アイナ。目覚めはどうだ?」

目が覚めると、兄さんがいた。


夏休みに入ってから見続けた悪夢は見なかった。


見なかったのだ。


それを兄さんに伝える。


「“正しいゴール”につけて良かったじゃないか。じゃあクリア条件の達成に必要だった3000円は、来月のお小遣いからちゃんと返せよ」

そう伝えたら、部屋から出て行った。



3000円で呪いが解けて、友達が返ってきたんだから安いものだ、と私は思いながら、ラジオ体操へ行く準備を始めた。



○○○



天田 アイナ


テナガアシナガサマへの対処法発見済

校舎からの脱出達成

火喰いグールへの対処法発見済

スルトへの対処法未発見


ダンジョンマスターによる解放でクリア

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