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いじめられっ子ダンジョン  作者: センチメンタルアスパラガス
いじめられっ子ダンジョン攻略戦
37/38

悪夢の終わり


「ご機嫌ではないか、魔王殿」

と、アバドゥンが話しかけてくる。


「まーねー」



アイナちゃんがゴールから出て行った後、静かになったダンジョンをふらふらしていた。


誰もいない。


モンスターも冒険者も。



時間制限も必要なくなったので、ずっと昼。


暇を持て余していたので、病院から自宅まで歩いている最中だ。



「ぶっ殺したかった奴らは全滅させれたもの。それに私の傷も回復した。目標達成よ」

自信満々にアバドゥンに答える。



「うむ。過程を問わない結果主義は、我が輩も同じであるが、うーむ」

なんだか渋い顔をしている。


まぁ、思い当たる節はある。



「タータロウス......さんの介入?」



「うむ」

アバドゥンが唸り続ける理由は分かっていた。



ほぼ攻略出来ないであろうダンジョンを、まさか脳筋プレイで攻略されるとは思わなかった。


私も思っているのだから、アバドゥンは尚のことだろう。



「最後の最後、オタクくんたちがすごかったからねぇ。納得いかないって感じなの?」

アバドゥンに訊ねる。


「いや。そうではないのだ。そっちは納得がいっておる」


「......へぇ!」



アバドゥンが言うには、そっちの敗北は必然なのだそうだ。


“いじめられっ子ダンジョン”は、命名と特性を与えた時点で、私に利するよう『いじめられっ子が持てる力を最大限に発揮出来る』ようになっていた。


いじめられっ子は魔王サイドだけではなかった、というわけだ。



「なるほど。オタクくんたちもダンジョンのパワーをもらってた、のね」


「その通りだ、魔王殿。それを勇者側で使われた、となるとだな」


「普通に3倍の戦力ね。無茶だわ」


こっちは1人、あっちは3人。

納得である。



「うむ。タータロウスの奴が力を貸しておる故、魔王殿と条件は同じ。この時点で差があったのだが、更にのぅ」


「更に?」


「魔王殿がいじめられっ子“Lv1”とすると、あの勇者パーティは3人とも“Lv3”......いや、1人は4であるな。つまり、10倍の差があるのだ」



私が1学期間のいじめの経験値しかないのに対し、向こうは1年以上のいじめられっ子の経験値。



「......ムーちゃんがワンパンって、そう言うカラクリだったのね」


「相手が悪かったのだ」


納得がいく。


やっぱり勇者は強かったのだ。



○○○



「じゃあ、アバドゥンは何が納得いってないの?」


「......我が輩の庇護下の者を救ったのが、タータロウスだと言う事実が、であるな。いや、助けられたことには感謝であるのだが......とても大きな貸しを、奴めに作ってしまった......ぬぅ」


「......」



「タータロウスの奴の調子に乗る姿が容易に想像出来るのが、腹立たしいのだ!彼奴は、調子に乗ると数年単位で話を蒸し返す!王たる節度に欠けておるのだ!」



お怒りモード?


というより悔しがりモードという感じだ。



「アバドゥン、どうやったら見返せるの?」


「う、うむ?魔王殿?ダンジョンマスターに対して忌避の気持ちなどはないのか?」



心配そうに聞いてくるアバドゥン。

今回、私はダンジョンマスターをしていたことで殺されかけた。


だが、まぁ、いじめなんていうのも、緩やかな殺人だ。


そう考えれば、反撃の方法があるだけマシである。


忌避なんてないし。

寧ろ、感謝すらしている。



だからこう答える。

「ないよ。それにもう、破壊神と魔王でしょ?アバドゥンが悔しいなら、見返すのを手伝うのが魔王の筋、じゃない?」



「......お嬢さんに声をかけて、正解だったようだのぅ」

そう言いながら、アバドゥンが私の頭を撫でる。



「まぁ、まずは休息であるぞ、魔王殿?病み上がりである。ゆっくり癒されよ。何、退屈はせん。この夢の中ならば、いくらでも話せる故。意識が戻るまで語ろうではないか」


「ありがとう、アバドゥン」



○○○



アイナちゃんがダンジョンをクリアして4日後、メイは意識を取り戻す。


だが、頭がボーっとするため、言葉は出ない。ただ、目を開け、周りをみるだけだ。


問いかけに反応しただけで歓喜され、側にいた母は流涙していた。


起き続けるのはキツかったので、また眠る。



しっかりと声を出したのは、次の日であった。



○○○



集中治療室から一般病床に変わった後は、アイナちゃんや小林くんがお見舞いに来てくれた。


小林くんはずっといたらしいのだが、意識を取り戻してからの面会は初めてだ。


2人しかいなかったので、勇者パーティ......もとい、オタクくんたちは?と聞くと、来院するのを躊躇っていると返ってきた。



何でも、私が世話をしていたムーちゃんを殴り飛ばしたのは、良くなかったのではないか、と気にしているらしいのだ。



気にしなくても良いのに。



「なんかね、殴り飛ばした後、そのまま宇宙まで行ったらしくてね。オリオン座の近くで燃える宇宙船や、タンホイザーゲートの向こう側のオーロラとかを見ちゃったんだって。早口で何言ってるのか、最後はよく分からなかったよ」


「オタクくんたちらしいね」



「それと、たまに夢にタータロウスさんが出るんだって。契約して異世界転生しようとか誘いを受け続けてて苦痛らしいよ」


「アイツら、下手したら乗りそうだもんな。大丈夫かな」


「大丈夫......だと思う。アバドゥンでもそんなパワーないし」



オタクくんたちの話題を皮切りに、色んな話をした。



まず、アバドゥンと会った姿見は、正光寺さんが回収したらしい。


タータロウスさんの鏡と合わせ鏡になっており、2人とも鏡からは外の世界に介入出来なくなったとのことだ。


まぁ、鏡に関してはたくさんあるので、そのうちの1枚が封印された、というだけに過ぎないのだが。



それからクラスのこと。


クラスの人たちは大なり小なり事件性を抱えている。

話している時に、示談や民事といった言葉が、小林くんから出た。

私が目を開けるまで、滞在できる時間を病院で過ごしていたので、私の両親のしゃべっていたことを聞いていたのだそうだ。



私への行為は傷害事件として『算文小事件』としてニュースになっており、主犯格の女子グループは、刑事事件として扱われているそうなのだ。


私は知らなかったが、斎藤くんが運営していた裏サイトがあり、彼も主犯格として含まれているらしいのだ。


いじめや暴行の指示者として扱われるようになるらしく、更に罪が重いらしい。


ざまぁみろ。



PTSDとなり、家から出れなくなった人や、パラノイアを発症したり、不眠症で入院した人もいるらしい。


やられて初めて、人の気持ちが分かったのだろう。高い授業料だったと、省みてもらいたいものだ。



後、来学期から担任が変わる、というか大塚先生は教師を辞めるらしい。


アイツには先生とか向いてないし、当然の結果と言えよう。


夢の中ではクラスの人を何人か殺めている。そんな奴が、教師なんてちゃんちゃらおかしい。


教頭への栄転の話もあったそうだが、ざまぁみろ、だ。



私をいじめて、反省しなかった奴らは、軒並みしっぺ返しを喰らい、恐怖に震えている。



夏休みの初めの日に立てた誓いの通りになった。


有言実行。

ふんす、と胸を張るのだった。



だいたいの話をして、一呼吸入れる。



そして


「2学期からは、私、おばあちゃんちの近くの小学校に行くことになったんだ」



○○○



そう言うと2人は少し寂しそうな顔をするが


「まぁ、仕方ないよね」

「メールは頂戴ね?」


意外と淡白な返答だった。


もっと悲しむかな、と思ったのだが。



まぁ、私の意見では変えられないし、全国ニュースなのだから、マスコミや何かも気になる。



妥当。



「だから、オタクくんたちには、私がいなくなる前に一度はお見舞いに来いって伝えといて」



退院日が転校日になるから、なるはやね、と伝えた。



出来れば、カステラをお土産にして欲しいと言ったが、それはダメと看護師さんから言われてしょんぼりした。





1学期から始まった私へのいじめは、やっと幕を閉じたのだ。

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