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いじめられっ子ダンジョン  作者: センチメンタルアスパラガス
いじめられっ子ダンジョン攻略戦
36/38

Dungeon Buster !!!

評価、感想、ありがとうございます


駅のあった先。


永遠に続く闇の方から光を纏い、3つの飛行体が現れた。



巨大なメカのライオン。


巨大な新幹線。


巨大なカブトムシ。



それらが雲の隙間に入っていく。



その後訪れた目が眩む程の閃光。


閃光の後、空を覆っていた雲に巨大な隙間が出来る。

月明かりが差し込み、暗闇が晴れ、街が照らされる。



そして、雲の合間から


巨大な人型の何かが降りてきた。



○○○



意を決して、立っていた私に、その人型が声をかける。


いや、かけてきたってのは少し違う。


中にいる彼らの声が聞こえてきた、が正しい。



「勇気と努力を力に変えて!」


「愛と正義で身を固め!」


「希望と根性で闇を払う!」



時代劇とかで聞く口上、見栄。

そんな言葉が頭をよぎる。


まぁ、よぎるのは良いのだが......



「迷宮!」


「攻略!」


「ダンジョンバスター!」



「「「助けに応じ!ここに!!推参!!!」」」


先生と一緒に永遠の闇への急行列車に乗って行った3人の声が響く。



......嬉しい。


もちろん、彼らが帰って来たのだから。



だが、それよりも強い感情が脳内を占拠していた。



安心感や畏怖とは違う。


この場に相応しくないであろう感情。



「何これ......」



疑問。



思わず口から感情が吐露してしまう程だった。



○○○



タータロウスさんに、3人が願ったのは、『勇者の力』だったはずだ。


ならば、目の前に現れたのは、その力なのだろう......。



本当にそうなのだろうか。



私の前に背を向けて、立ちはだかるそれ。


それは、極限まで勇者の概念をねじ曲げ、オタクくんたちが、タータロウスさんを爆笑させて作り上げた、全長80mを超過する超巨大バトルマシン。


タータロウスさんから受け取った3つの腕時計。

それらは特殊環境下でのみ使用が出来る召喚アイテムと言っていた。


召喚されたカブトムシと新幹線とライオンのマシンが空中で変形合体して、完全に別の人型マシンになった、と言うことなのだろう。



その細部に、彼らの憧れのスーパーロボットのデザインがちりばめられている、のだろう。




正式名称『対迷宮絶対攻略用超巨大決戦勇者 ダンジョン バスター』......らしい。


少女(メイ)の悪夢に勝つには、男の子の夢を詰め込んだ質量兵器で真正面からぶっ飛ばすしかない、と饒舌を振るっていた。


お腹を抱えて笑うタータロウスさんには、威厳も何にも無かったし、私には男の子の夢と言うのがどう言うものなのか、さっぱり分からない。



あの時は「知らんがな」と一言で切り捨ててしまったが......。


まさか、そんな悪ふざけの玩具みたいなのが、この絶対絶命のピンチの時に来るとは思わなかった。



○○○



「勇気と!正義と!希望の!3つの縮退エンジンを動力源にした、スーパーパワーの勇者ロボですぞ、天田氏!もう安心してください!」


何、縮退エンジンって......。

聞いたことないわ。



3つの縮退エンジンを重力崩壊限界までフル稼働させて、3分間戦うことが出来る究極のロボット......

長すぎる前口上は、ただの無駄なのでは!?



「あらゆるダンジョンを一方的に駆逐出来る、言わば全てのダンジョンの天敵。現代における勇者。それが努力と根性と人類科学の到達点!巨大ロボ!」


竹井くん。

テンション上がりすぎてヤバい感じになってるね。


努力と根性が巨大ロボに繋がる理由が、全然わからない。



「起動するのに必要な勝利の鍵!それは愛!一ノ宮さんと天田さんの互いを慈しむその感情こそが!ダンジョンバスターを勇者に変えてくれる!」


秋くん。

君まで......。


多分、いつもクールな感じでいたけれど、本当はそっちなんだろうね。



「「「さあ!お楽しみはこれからだ!!」」」



○○○



悪意を乗せた絶望の翼、魔王少女の悪夢の守護者(キーパー)が、街を破壊しながらやってくる。



正義と愛と希望の使者、勇者少年達の夢の体現者(バスター)が、病院に背を向け、迎え撃つ。



「最初からクライマックスですよ!ウェポン・フルオープン・アタック!!」

秋くんの声とともに、腕を組んで構えていたロボが姿勢を解く。


キーパーにロボが両手を向けた瞬間、その足、お腹、指先から大量のミサイルが飛び出した。



「宇宙速度の圧縮窒素弾頭ミサイル!避けれるもんなら避けてみろ!」

竹井くんの声が響く。



追尾するたくさんの光の帯が、巨大な蝶にぶつかり、光を放っている。


遅れて聞こえる爆音、窓ガラスを揺らす衝撃。


屋上に立つ私は、その衝撃に耐えられず、転んでしまう。



ただ分かるのは、凄い威力だと言うこと。



これで終わってくれれば、とただ見つめながら祈る。



「やったか!?」


それはダメだよ、竹井くん。




爆発轟く巨大な光源からは、雲を引きながら速度を落とすことなく、キーパーが飛んでくる。


先程までとは違う。


凄まじい殺意と敵意をはらんでいる。



舞台装置を破壊するためではなく、目の前の敵を倒すために飛んでくる。



「気合い入れるでござるよ!秋氏!竹井氏!」


「うん!」


「決め技、だな!任せろ!」



彼らの声にあわせ、光輝き始める巨大ロボ。



「真正面からぶっ飛ばす!」


「残りエネルギーを全て、推進力と右手に回しますよ!」


「いきますぞ!バスターシャイン!!」



凄まじい閃光と爆音と共に、蝶へ飛んでいく巨大ロボ。


もはや物理法則も何もあったもんじゃない。


ロボが飛んだ後に、空気の壁をぶち抜いた雲が形成されるのが見えた。



そして



「「「会心一撃(クリティカルストライク)だぁぁぁッ!!!」」」



思いっきりぶん殴ったのが見えた。




キーパーは巨大な羽根を残して、胴体は殴られた衝撃で爆発、四散した。




推進力の衰えない巨大ロボは、オタクくんたち3人を乗せたまま、地平の彼方へ飛び行き



一筋の星の瞬きとなった。



これが男の子の夢......なのか......。

私には理解が出来なかった。


ただ



タータロウスさんは、大満足だろうなぁ、というのだけは分かった。




「流石だね、勇者!」




私はメイちゃんの待つ集中治療室に向かう。


もう世界は暗くない。


優しい月明かりが照らしている。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 笑
[良い点] アイナちゃんのものスッゲー微妙な心境が伝わってくるようだけど兎に角これで…。
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