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いじめられっ子ダンジョン  作者: センチメンタルアスパラガス
いじめられっ子ダンジョン攻略戦
35/38

救う者

感想ありがとうございます

励みになります


駅から神社に向かい、境内を突っ切る。



風が木々の葉を揺らす音も、鳥の囀りも、人の生活する音もない。


ただただ無音の神社。


舞台装置として、ただあるだけの神秘性を感じない境内。


そこを全力で駆け抜ける。



○○○



日没直近の病院前。



お化けなんかよりも怖いものを、夢で見てきたのに、まだ見ぬお化けを空想し、足がすくむ。


だが、もう少ししたら完全な暗闇になる。


そうなったら、もう、身動きが取れない。



意を決して、入り口の重たいガラス扉を押し、病院に入る。



○○○



外の光が入りにくくなっており、殆ど暗闇のフロントを抜ける。


エレベーターが使えないので、真っ暗闇の非常扉の階段を使う。


もう後は、自分の記憶の中の病院が頼りだ。



壁に手を当て、僅かな光源の照らす場所を頼りに、なんとかメイちゃんの眠る集中治療室に辿りついた。



○○○



「......メイちゃん?」


集中治療室の前の窓に、今にも暗闇に飲まれそうな夕日を受ける人影が見える。



「......アイナちゃん?」



人影がこちらに声をかけてくる。


近寄ってみると、頭に包帯を巻いたメイちゃんがいた。



「......クローンのメイちゃん?」


「......違うよ、私はオリジナルだよ」

少し笑顔で私の声に答えてくれる。


その後嬉しそうに、でも寂しそうに

「......そっか。アイナちゃん、来ちゃったのかぁ。なら小林くんや、竹井くん、秋くんに、澤本くんも?」

と聞いてきた。



「小林くんはいないよ。小林くんは、現実世界でメイちゃんを見てる。来たのは私とオタクくんたち」


「そう、か。3人は?」


「電車で先生と会って、襲われて、私だけ先に逃げれるようにしてくれたんだ。隙を見て逃げて、後から合流

「出来ないんだ。あの電車、次の駅がないんだ」


「......」


メイちゃんが私の言葉を遮る。



「あの電車、もう止まることなく、ずーっと闇の中を走り続けるんだ。永遠に」



「......そっか......」


「せっかく来てくれたのに......ごめん......ごめんね......」


メイちゃんが俯いて、震える泣き声を絞り出すように謝って来た。



それからはひたすら、ごめんね、と謝り続けた。



○○○



「アイナちゃん......?」

少し気分が落ち着いたのか、喋らない私にメイが聞いてくる。


もう真っ暗だ。


暗闇に浮かぶシルエットしか判別出来ない。



「メイちゃん、私がねココに来たのは、メイちゃんが呼んだからじゃないの。他の人がどうかは知らないよ?でも、私やオタクくんたちがココに来たのは、自分の意思なの。メイちゃんを助けたいっていう気持ちで来たの。だから、後悔なんてしてないし、謝る必要もないの」


「でも」

メイちゃんが言い淀む。



「メイちゃんが、アイツらのことを嫌ってるのも、殺したいと思ってるくらい憎んでるのも知ってるし、わかってる。聖人君子でもなければ、受け入れるなんて無理だよ!そして、多分だけど、このダンジョンは、そんな奴らに一矢報いるための場所なんでしょ?」



「......ダンジョンってよく分かったね」


「アバドゥンさんの知り合いから聞いたの。ココで死んだ人の命を使って、メイちゃんは命を繋いでるんでしょう?」



「アバドゥンの知り合い......よく見つけられたね......。

そうよ。私は、このダンジョンの魔王になったの。ダンジョンの中の命を吸収して、私の命に変換するの。でも、それでも回復はし切れない。......脳のダメージがとても大きいらしいから。自分で息をすることも、意識を取り戻すことも出来ないかも。でも、夢の、この世界では生きていける。だから、最後に憂さ晴らしをしたかったのよ。......ごめんね、私、こんなダメ人間で」



「それを何とかするために、私は来たの」



ポケットから葉っぱを取り出す。


タータロウスさんから貰った生命の樹の葉っぱだ。



「メイちゃん。ダンジョンを作る時に必要なものって何か、アバドゥンさんから聞いた?」


「......ええ」



「アバドゥンさんはね、“モンスターの創造”が上手いらしいの。そして、私は知らないけれど、ケケトさんは“迷宮の創造”が上手いらしいの。昔のエジプトで培った冴え冴えなんだって」


「......」



「タータロウスさんはね。残りの一つ。“宝箱の創造”が上手いらしいんだって」



私は、メイちゃんに“生命の樹の葉っぱを”を手渡す。



「夢の中での身体の損傷が、現実世界での身体の損傷になるように、夢の中の癒しは、現実世界の癒しになる、と思うの。だから」



生命の樹の葉っぱが仄かに光出す。


本当に薄明かりしか残っていなかった病院の廊下を、暖かい光が照らす。



「......ありがとう、メイちゃん」



○○○



見た目、傷や怪我が無くなったメイちゃん。


包帯を取ってみると、痛々しい縫い目はあるが、痛みはないみたい。



「良かったぁ」



生命の樹の光が消えていく。



完全な暗闇。


お互いの顔も見えない暗黒の世界がやってきた。



「......あっ」


メイちゃんの声だけが聞こえる。



「急いで!アイナちゃん!」


メイちゃんが私の手を引き、集中治療室の扉であろう場所に連れて行ってくれるが



「あっ......開かない......」



握った手が下へと離れていく。



「どうしよう、開かない......このままじゃ......」


「メイちゃん?」



焦るメイちゃんが、言うには、この先がゴールらしい。


そして、1人でもゴール出来れば、このダンジョンは全員が攻略出来たことになる。


逆に3日間かけることで、命の吸い出しは終わり、呼び込んだ者たちを殺すことが出来る。



今はもう、回復も出来た。


そして、私たちを殺すつもりもない。


そのために、後は、私がゴールをすれば良いのだ。



だが



「時間......切れだわ......」



メイちゃんがそう呟いた時、床が揺れた。


地響きのような、余震の様な。



私は、さっきまで外の灯りが見えていた廊下へ駆ける。


窓の外を眺め、遠くに光の塊があることを確認した。



「......ムーちゃん。私のダンジョンの守護者(キーパー)。このダンジョンは、ムーちゃんの羽化前にクリアしなくちゃいけなかったの......」



ムーちゃん。


メイちゃんが以前語ってくれた、人工物以外を踏むと捕食してくるダンジョンワームだ。


元々は、メイちゃんの家に飼っていたオガサワラシジミのムーちゃんだ。


それの......羽化?



「かなり遠くなのに、なんか蝶の羽が見えるよ?」


「......250mある巨大蝶々だから」



「なんか、飛んだら下が光ってるよ」


「......鱗粉がプラズマ化して、飛び散った場所が爆発するから」



守護者(キーパー)?」


「......ムーちゃんがラスボス。倒さないとゴール出来ないようになってるの」



「弱点は?」


「......クリアさせる気なんてなかったから......」



遠くから地響きが聞こえ、窓が揺れる。


その窓の先を、私とメイちゃんは見つめていた。



○○○



「ごめん......ごめん......、こんなつもりじゃなかったの......。こんな弱い者いじめみたいなこと、本当は......」


俯いて座り込んだメイちゃんが、ずっと謝罪の言葉を繰り返す。



「......アバドゥンさんに止めてもらえない?」


「......無理、ごめんなさい......、ダンジョンが完成した後は、手を出せないの......」



「そっか......。


じゃあ、ムーちゃんを倒せばいいんだね!」


「えっ......」


私の言葉に驚くメイちゃん。


暗闇で表情はわからないが、目を白黒させてるんじゃないかな。



「大丈夫!私、ドッチボール強いし!虫だから、きっと殺虫剤でやっつけれる!......だから、泣かないで、メイちゃん」


自分でいいながらも無理がある理論。


でも、もう他には誰もいない。


いないんだ。



○○○



病院屋上。



どんどん近づいてくる爆撃音。



圧倒的な破壊力を持った巨大生物。



こんなの倒せない。


そんなことは、わかってる。


でも、もう私しかいない。



私がムーちゃんを倒して、ゴールしなければ、みんなが死ぬ。

何より、私やオタクくんたちが死んだらメイちゃんが耐えられない。



だから頑張るしかない!



出発前に、私は聖女役だって、タータロウスさんが言っていた。



なら、奇跡だって起きる。


奇跡なら聖女のお得意技だ!



殺虫剤を握り、私は叫ぶ。


聖女の自分に!


奇跡を起こしてくれるかもしれない神様に!


誰かに!






「お願い!メイちゃんを!メイちゃんを、助けて!!」































「「「......任せろ」」」

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― 新着の感想 ―
[良い点] メイちゃん自身のは一安心?か [一言] ムーちゃんの羽化は即ゲームオーバーじゃなくて セプ○ントリ○ンの時間切れ演出みたいな感じか。
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