ダンジョン・スタンピート
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目を覚ますと、教室にいた。
だが、前のような朽ち果てた教室ではない。2週間前に見た教室だ。
だが、机や椅子は散乱し、窓ガラスは割れている。
何かが暴れまわったような有様だ。
そして
教室を見回すと、岡田さんがカーテンで作られたロープで首を絞められ、死んでいるのを見つけてしまった。
こときれる寸前まで何かを睨みつけていたような怖い顔をしている。
廊下からは、何かを叩くような音と水のしぶく音がする。
「天田さん」
竹井くんが目を覚ましたようだ。
私に話しかけてくる。
「他の2人が起きる前に聞きたいのだが、あの変死体は天田さんは関係ないよね」
「ないよ」
「だよね、やばい敵がいそうだな」
続いて秋くんと澤本くんが目を覚ます。
「夕方は夕方ですが、前と同じような気味の悪い感じはないですね」
「ですな、秋氏もそう思いますか。小生もそう思いますぞ」
夕方。
そして、タータロウスさんの言っていた時間制限。
つまり
「暗くなったら終わりってことかな?」
「かも、だな」
「だんだんと雲も出て天気も悪くなってきてる」
「教室の電灯もつかないですぞ。暗闇に包まれたら、ゲームオーバーと考えるのが妥当そうですな」
「なら早く移動しましょう。あまり時間ないだろうし」
「うむ」
「そうですね、でも何処へ?」
「一ノ宮氏の家は違いそうでしたし、図書館ですかな?」
「いいえ。メイちゃんは、前のダンジョンでも、自分に謝らせに来させるようにゴールを設定していたわ。だから」
「「「大学病院」」」
「ええ。自転車で行っても間に合わないけど、行くしかないわ」
○○○
廊下に出て、下の階に行こうとした時、恐ろしいものを見てしまった。
何かがぶつかる音と水の音がするな、とは思っていた。
「うっ!」
「天田氏、グロ注意ですぞ」
竹井くんと澤本くんが、私に呼びかける。
廊下の先では、4人のメイちゃんが誰かの四肢を手で掴み、動けなくなっているところに、思いっきりバットで頭部や胸部を振り下ろしていた。
すでにその誰かは死んでいるだろうし、脳漿が廊下に飛び散っている。
だが、メイちゃんたちは、やめようとしていない。
「あの靴下、いつも高野さんが履いてたやつね......」
複数人いる時点でメイちゃんでは無いのだが、メイちゃんが人を物理的に殺しているのを見るのはショックだった。
「見つかったら、我らもああなるのか」
「どうかな、さっき反応されて目があったが特に行動は変わらなかったけど」
「1学期にされたことを何百倍にもして反撃するモンスターなのかもですな。我々、一ノ宮氏を無視しただけでしたから」
「高野さんには悪いけど、そのまま抜けさせてもらおう」
○○○
裏門から抜けて学校から抜け出した。
その途中、ウサギ小屋でリアル黒ヒゲ危機一髪みたいに、鋭利な棒で滅多刺しに惨殺されていた仲良し2人組がいた。
お地蔵さんのところには、頭部と胴体が離れ離れになった野村くんを、メイちゃんがケラケラと笑いながら、取り囲んでいた。
何人かのクラスの子の家の前を通りかかったが、扉や窓が割られ、大量の血や臓物が飛び散っているのが見えた。中には返り血で汚れたメイちゃんたちがいるのも見えた。
「一ノ宮さんを殺しかけた女子グループの人たち、めちゃくちゃ惨たらしく殺されてますな」
「いじめなんかに加担しなければ良かった、とでも思えれば良いのですが」
「クローン一ノ宮氏、本当に我々を無視しますな。いないものとして扱われているのは、ツライと言えばツライですが、状況的には有難いですな」
クローンメイちゃんは少なくとも私たちには牙を剥かないようだが、だが、あまりにも多すぎる。
この小さな町に千人以上はいそうだ。
いや、もっといるかも知れない。
そんなメイちゃんたちは、私たちを無視しながら、他の人たちを殺そうと徒党を組み、捜索している。
アレに敵意を向けられたら、まず生きて行けないだろう。
「しかし、我々は完全無視でぶつかられたりしているのですが」
竹井くんが言う。
「天田さんは、向こうが避けてくれるんですな」
○○○
徒党を組み、往来を行進するメイちゃんたちの前に立つ私。
メイちゃんたちは、少し私を見た後、私を避けて過ぎ去って言った。
「やっぱり」
「天田氏は、クローン一ノ宮氏にも認識されているようですな。意図的には攻撃されない様ですな」
「そっか......」
私は、近くにいたクローンメイちゃんの肩を叩き、呼び止める。
立ち止まって、私を見てくれるクローンメイちゃん。
「大学病院に行きたいの。自転車を使うから、道を開けて。ね?」
伝わっただろうか?
すると話しかけたクローンメイちゃんが、私の手を掴み、私を引っ張り出した。
「何ぃ!?」
「そんなバカな」
「すぐ行きますぞ」
オタクくんたちが私の元へやって来る。
その頃には、私は通りの曲がり角まで来ていた。
曲がり角まで来た後、クローンメイちゃんは私の手を離し、通りの向こう側を指さした。
「電車?使えるの?」
クローンメイちゃんは、私を見ることなく、行列に加わって行ってしまった。
○○○
駅に着く。
駅にも大量のクローンメイちゃんがいる。
駅には血溜まりもできており、誰かが犠牲になったというのが分かる。
気分が悪くなり、座り込みたくもなるが、20分に1回来る隣町行きの列車がホームに来る音がした。
これを逃したら、もう次はない。
これが終電だ。
私たちは、急いで、駆け出し、ホームへ向かう。
駆け込み乗車は良くないのは知っているが、今はそんなことを言っている場合じゃない。
足の遅い竹井くんがギリギリ乗り込めたタイミングで扉がしまった。
ようやく、一息つける。
きれた息を整える私たち。
動き出す列車の車窓から外を見ると、電線の上に引っかかっている焼死体を見つけることが出来た。
何千、何万という殺意が、自分の知っている人間にぶつけられていることを、改めて思い出して
私は吐いた。




