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いじめられっ子ダンジョン  作者: センチメンタルアスパラガス
2度目のダンジョンマスター
29/38

残りHP 2


やりとりをしてお見舞いのために集まった私たち。


メイちゃんがいる病院に入ると、受付では異様な光景が広がっていた。



○○○



「謝罪したい」と謝罪するとは思えない強迫的な態度で詰め寄る同級生。

それに付き添う彼らの両親。


それにドン引きながら対応するメイちゃんのお母さん。



娘が殺されかけて、死の淵にいるのにも関わらず、自分たちの都合なのだろうか遠慮のない強気の謝罪をしている人たちをみて困った顔をして、拒絶するメイちゃんのお母さん。


それと対照的に、同級生たちやその親は切羽詰まった顔をしているのが、私たちでも読み取れた。



これは何かある。



そして、それを遠巻きからみている医療関係者、それと......多分マスコミ関係の人。

隠し撮りのようなことをしているのが見えた。



警備員さんも来ており、騒いでいた人たちは退出を求められていた。



少人数の警備員さんの説得に応じないため、院内放送が流れた。

その後すぐに複数人の警備員が集まり、力づくでの追い出されていた。


追い出されている中の「この人殺し!謝らせろ!」という声が響いた。



殺されかけたのはメイちゃんの方なのに、加害者側が被害者ぶる光景。



異様以外に体現の仕様がなかった。



私は小林くんや、オタクくんたちの方を見る。


全員が、わけが分からず、場所を弁えない騒ぎにドン引きな顔をしている。



多分私も同じ顔をしているだろう。



そんな中、小林くんが「あっ。野球部のコウヘイがいる。ちょっと話、聞いてみる?」と私たちに聞いてきた。


私やオタクくんたちに、あの集団の中に馴染みの人はいない。


正直、関わりたくないが、気になることは確か。

「任せる」と答えると、小林くんは話しかけに行った。

小林くんにつられ、私もオタクくんたちもついていった。



話しかけるだけだしと、油断はあった。


「僕らもお見舞いに来たんだけど、どうしたの?」と小林くんは話しかけようとした。


だが、その前に向こうから噛みつかれた。小林くんも予想外だったらしくたじろんでいる。



「お前らは良いよな!もう大丈夫なんだから!」

そんなことを彼は言った。



彼に話しかけたことで、他の子たちも私たちに詰め寄ってきた。



「何でお前らだけ」

「ずるい」

「なんでうちの子たちだけ」

と気づいたら、親まで詰めよってきている。



「事情が分からないので、教えて下さい!」



小林くんに詰め寄り、腕を掴まれ、服を掴まれ、喚き散らかされているところに、思わず大きな声が出てしまった。



○○○



彼らは、夢を見たそうだ。



夏休みが始まってからずっと見ていた夕闇と霧の悪夢ではなく、終業式の日の夢を。


ホームルームの教室には、私たち以外の全員がいたそうで、そこにはメイちゃんもいたそうだ。



みんながポカーンとしているホームルーム中に、メイちゃんは突然立ち上がった。


メイちゃんは、クラスにいた人たちに、自分にした嫌がらせを一人一人挙げていったそうだ。


そして、最後に図書館で女子グループから脅され叩かれ、階段から落ちて死にかけていると言ったそうだ。



『これまでの悪夢は、過去に学校で行われたいじめの負の意思の蓄積が見せたもので、いじめをした人に罰を与えるものだった』

『いじめっ子が改心していじめられっ子に謝れば、夢から覚めることができるものだった』

とメイちゃんは言ったそうだ。



過去形であることに、コウヘイくんは気づいたそうだが、周りはそうではなかったそうで、夢の中の教室で「やっぱりこいつのせいだったのよ」「ブス子が死ねば解放されたのか」「死ね」とメイちゃんに非難が出、色々なものが投げられたそうだ。



だが、メイちゃんは動じず、『これまでは、だ』と言ってみんなを睨んだそうだ。



メイちゃんを殺しかけたことで、負の意思が膨れ上がり、罰を与える夢でなく、全員を殺す夢へと変貌したのだそうだ。


早くに謝っておけば良かったのに、と見下した薄い笑顔でメイちゃんが言ったそうだ。



急に謝り出そうとした人たちを制し、


『これから3日間同じ夢を見る』

『誰か1人でも夢の出口にたどり着けば、全員助かるが、全員が死ねば、現実世界でも全員死ぬ』

『私に謝って、許す返事を貰えば夢から抜け出すことが出来たが、女子グループに殺されかけたことで返事が出来ないから、頑張って出口を目指せ』


そうメイちゃんは言ったそうだ。



つまり、このままと3日後にみんな死ぬ、ということだった。


これまでの夢と、そして皮膚炎や口内炎から真実だと結びついた。



私や小林くんが、教室にいなかったのは、すでに私に謝ったから。

オタクくんたちは、自力で前の夢から脱出したからいない、とも言っていたそうだ。



教室は阿鼻叫喚になったらしい。



「みんなで新学期に謝ろう」と各自宅訪問の際に先生が言ったから謝りに行けなかっただの


女子の人殺し集団のせいで、巻き添えを食らっただの


メイちゃんへのいじめを扇動し、負の意思を溜めさせた男子連中が悪いだの


生徒と教師、男子と女子とで仲間割れが起きた。


ワーワー言っていると、女子の1人がおかしくなり、仲が良かったはずの2人を机の中にあった彫刻刀で刺して、殺したりと殺し合いにまで発展したらしい。


教室から逃げる者、その女子を取り押さえる者と騒然となっているうちにメイちゃんは消えたそうだ。


メイちゃんが去り際に『悪いことをしたらちゃんと謝らないとね』と言ったのを聞いた人がいたのだそうだ。



みんながバラバラに動き、そこからの動向はわからないけれど、コウヘイくんは、夢の中のメイちゃんの家に行こうとしたらしい。


教室を出る時に、チョークや重曹の取り合いになったそうだ。


なんとかコウヘイくんは、チョーク1本を持って、夢の中のメイちゃんの家に辿り着いたそうなのだが、そこには大きな虫の蛹があるだけで、肝心のメイちゃんはいなかったそうなのだ。



学校に戻っている際に、虚ろなメイちゃんがやってきて、謝る隙もなく、砂をかけられ目を潰され、首を絞められ殺され、目が覚めたそうだ。



他の人も、メイちゃんに謝る前に、間髪入れずに殺され、目が覚めたのだそうだ。



夢の中での謝罪が許さないのなら、目を覚ますことを期待して、病院のメイちゃんに謝りに来たのだが、関係者以外面会拒絶とあり、騒いでいた


ということらしい。



「俺らどうすれば良いんだよ」


そんなことを彼らはいう。



因果応報、自業自得、自らの蒔いた種。

色々言いたいことはある。



「頑張って」



それ以外にかける言葉がなかった。


特に何も返事はなかったが、殺気を込めた目で彼らは私たちを睨んでいなくなった。



○○○



「......予想はしていたけれども」

小林くんが、去り行く彼らを見ながら呟く。


「3日で皆殺し、と来たか」



「一ノ宮さん、マジギレですな」


「殺されかけた、となるとまぁ、分からなくもないですが」


「やはり魔法というのは、凄まじいですな」



とは言え



「子どもの妄言とは言え、親が聞いてしまっている以上、クラス全員皆殺しとなれば、大ニュースよね」


「ああ、そうなったら、それこそ遺族から殺されかねないな、一ノ宮さん」


「盟友としてそれは阻止したいところですが」


「難しいだろうね」


「小生ら、魔法使えませんからな」



5人の間に沈黙が流れる。



時間がない。

魔法なんて使えない。


つまり、やれることが無い。



お手上げ状態なのだ。



「とりあえず、お見舞いに行きましょう......」


一旦、思考を放棄することにした。



○○○



私たちが、メイちゃんのお母さんに会おうとしたタイミングで、病院の入り口の方から見たことのある人が目に入った。


高齢の夫婦の後ろに、以前メイちゃんに謝罪した時に、駅であった人だ。



「こんたびは、災難でしたね。小さい頃からメイちゃんは見させてもらっちょるけん、心配になってついて来ました」


メイちゃんのお母さんに挨拶をしている。


高齢の夫婦は、メイちゃんのおじいちゃんとおばあちゃんのよう。



「正光寺さんとこが、メイちゃん心配じゃゆぅて聞かんけん、一緒に来たよ。メイは大丈夫なんかぁ?」とおばあちゃん。



正光寺さん、と呼ばれていたのは、呪いが見えるとか言っていたお坊さんだった。



「呪いが見える人だ」



私がみんなにそれを伝える。


もしかしたら、何か手がないか思いついてくれるかもしれない、と一抹の希望を抱き、メイちゃんの部屋の前に移動した。

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