狂い出した冒険者たち
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小林からアドバイスをもらったマユとモモは、グールもテナガアシナガサマも攻略した。
だが、スルトの熱量に行く手を阻まれ、仕方なしに無限階段ルートへと方向転換していた。
誰かが彼女たちを起こすまで、ひたすらに下へ下へと歩き続けなくてはならないのだが、運良く彼女たちは2人で攻略することが出来ているため、話題の尽きることなく、楽しく真っ暗闇のピクニックをすることが出来た。
『攻略は出来ないけど、この情報は自分たちのスクールカーストを上げる材料になる』『小林くん様様』などの会話が暗闇の下り階段をこだましていた。
○○○
一方のマリは、1人教室に佇む。
「ふざけんじゃないわよ!」
誰もいない教室の机を蹴り飛ばし、机を窓の外へ放り投げと大暴れをしていた。
「マユも!モモも!ブス子も!みんな死ね!!」
と言いながら、元々彼女らの机を蹴り飛ばす。
偶然ではあるが、そこで彼女は邪神像の首を手に入れることが出来た。
普通ならば、ラッキーと思うところなのだが、彼女はこれを現実とリンクして捉えた。
すなわち『ブス子が首を隠して、私をいじめていた』と捉えたのである。
ある意味では正解なのだが、完全に狂人の発想、被害妄想の境地である。
下校の放送を聞き、重曹をアシナガサマにぶつけたマリは、「ブス子を殺す、ブス子を殺す」と言い続ける壊れたレコーダーのようになっていた。
○○○
親にいつまで寝ているのか、と怒られ起床したマユ。
マユは携帯を取ると、モモからの着信を確認した。
「あの階段。誰かが起こさないとずっと起きれないのね。小林くん、それは知らなかったみたいね......」
マユは、そう呟いた後、モモに「今起きた」と電話を返す。
そして、夢の中で2人で語った“救世主計画”を実行することにした。
○○○
「あなたたちから連絡って珍しいわね」
桜田グループや高野グループなども含めて、電話に応じてくれた女子が、一同にカラオケボックスに集合した。
夏なのにマスクや長袖、包帯は、共通になってきている。
そこには誰も何も言わない。
「『ブス子にみんなで謝るから家を出させて』って言ったら、やっと家から出してもらったわ」
「まぁ、アンタは警察沙汰だし」
「はぁ?ここにいる奴らはみんなそうなんですけど!」
気が立っているのか、ちょっとのことで口喧嘩が始まる。
まぁ、それはどうでも良いのだ、マユとモモにとっては。
「あの夢を見なくて良くなるかもしれない、って言ったら、どうする?」
マユが口を開いた。
カラオケボックスの中が静まり返る。
「......マジで?」
「どうやんのよ!教えなさいよ!」
次の瞬間、一斉に口を開く。
「そういう態度取るんだー、ふーん」
「悲しくなって喋れなくなっちゃうー」
マユとモモが他の女子たちに牽制する。
「マユたち、小林くんとぉ、仲良いから教えてもらったんだよねー」
「小林くんに感謝ーなんだけど、それを聞き出せた私たちに、然るべき態度を取るべきじゃなーい?」
「......何が言いたいんですか?」
ホノカが聞く。
「マユたちを馬鹿にしてた奴らには教えないぞ、って言う意味ー。分かんないかなー?」
「謝るならー、今のうちって言うこと」
そう言い、マユとモモは携帯のボイスメモを起動する。
「ほら、みんな。みんなで幸せになろうよ」
○○○
マユとモモから連絡をもらえなかったマリは、小林の家を訪れていた。
その目は血走り、ただでさえ口内炎でアフタが出来ているにも関わらず、唇を噛み、血が出ている。
ドアを開けて対応した小林は、ゾッとしていた。
「......何か用ですか?岡田さん」
「......何でマユとモモには教えるのに、私には何も教えないのよ」
「......は?」
「私にも!攻略法を教えろって言ってんのよ!私だけ除け者にして!」
「いや、除け者には......
「じゅあ何でブス子には教えてんのよ!小林くんは優しいんでしょ!何で私だけ教えてくれないの!!」
「......マジで何言ってんの?岡田さん。僕は
「やっぱり!ブス子から口止めされてるんだ!それともマユ!?モモ!?」
ドン引きの小林。
玄関から叫び声がするので、小林の母が出てくる。
「あなた。少し冷静になりなさい?台所まで声が聞こえてきたけれど、少しおかしいわよ?」
「私は!おかしくない!お前の子どもは、私だけ除け者にして殺そうとしてる殺人鬼よ!さーつーじーんーきー!」
「......親御を呼びましょう」
「すぐ連絡する」
○○○
謝罪やこれからの便宜を図ることを約束に小林式攻略法をマユ、モモに聞き出してカラオケボックスから帰る女子一行。
だが、桜田 カスミはリーダー気質を発揮できないことに納得が行かず、攻略法を聞かずにカラオケボックスを早々と立ち去っていた。
「マユとかに聞かなくても、小林くんに直接聞けば良いじゃん。何なのよ、アイツら。気持ち悪っ」
歩くカスミが見たのは、小林家から両親に引きづられながら泣き喚く狂った岡田 マリの姿だった。
野次馬も出来ている程になっているため、小林家には近づくことが出来ない。
何をしてんのよアイツ、と心の底で思うカスミ。
「あの夢はブス子の仕業なんだから!首を自分の机に隠してたんだよ!私たちを殺すために!小林くんは騙されてるの!私が正しいから!信じて!今なら許すから!」
彼女の母が、小林くんと母親に謝りながら、父親が車に乗せていた。
「最近、不安定で。昨日、一ノ宮さんの家に行ってから尚更。1学期のことを許してもらえなかったかららしいのですが......、本当に申し訳ありません。ご迷惑をおかけしました」
○○○
車が去っていき、野次馬が少しずつ減っていく。
桜田 カスミは、頭に1つの考えがよぎり、離れず、動けなかった。
頭がおかしくなったマリの発言を鵜呑みにするわけではないし、あまりに非現実的だ。
だが、根本を見なければ、筋が通っている。
“この悪夢は一ノ宮 メイの仕業なのではないか?”




