イージーモードを歩んできた者
評価、感想、ありがとうございます
昼ご飯前まで、アイナちゃんの宿題をみんなで見ながら過ごした。
思ったより進まない。
アイナちゃんは算数とか理科とかが苦手なようだった。
読書感想文コンクールで毎年金賞を取っていた。
どうも文系タイプらしい。
私も小林くんもオタク3人組も理系、まぁ澤本くんは歴史や地理も得意な理系らしいが。
お互いの足りないところを補う形で宿題を解き、気づいたら昼になっていた。
昼ご飯はそれぞれのおうちで食べる。
自然と解散となった。
「いやぁ。人と喋るの、楽しいな」
1学期のボッチっぷりが嘘のようだ。
竹井くんや澤本くんが言っていたが、喋らな過ぎると喋り方が分からなくなるらしい。
秋くんから「そうならなくて良かったね」と一言あった。
○○○
昼過ぎ、図書館へ行こうと家を出たら、マリさんが家の前にいた。
仲良し3人組の1人だが、他の2人はどうしたのだろうか。
掃除もしてくれず、ウサギ小屋に閉じ込めたりと嫌がらせをしてきた人たちだ。
もしかして謝りに来たのかな?
「何か用ですか?」
マリさんに聞く。
「......ちょっとついてきなさいよ」
「えっ、やだ」
「......」「......」
いや、今まで嫌がらせして来た奴に、何で無警戒でいられると思ったんだよ。
「人のことを影で悪口言ったり、物をぶつけて来たり、物を隠したり、ウサギ小屋に閉じ込めたりするような人に、ほいほいついて行くと思います?」
「......ムカつく」
「いや、それはコッチのセリフ」
謝りに来たわけじゃないのか。
なら、どっか行ってくれないかな。
文系のアイナちゃんに、幾何の概念を教える本を探しに行きたいのだ。
「アンタさ、あの夢、見てないんでしょ?」
マリさんが切り出した。
「そうね、見てないわ」
「どうやったのよ、教えなさいよ」
「......」
教えなさいよ、と来たか。
「何よ!その目!みんなが困ってんだから助けるべきでしょ!」
「そのみんなが、1学期に私に何をしたのか覚えてる?」
「じゃあアンタは、私やみんなが死んでも良いと思ってんの!?」
私の質問に答えるつもりはないみたい。
「1学期の時、私をいじめてて、私が自殺するかも?とか少しでも考えました?」
「......」
「都合が良い時だけ擦り寄ってくる面の皮の厚さだけは、評価しますが、もう少し礼節とか弁えたらどうですか?」
「うっ......うっさいのよ!ブス子!アンタに何か聞かなくても、マユとモモが小林くんに聞いてるから、それで充分
マリさんの携帯が鳴る。
舌打ちの後、携帯を覗き込む。
人との会話中に失礼な奴だ。
ブス子、か。
久しぶりに言われたな。
......はぁ!?」
マリさんが素っ頓狂な声を出す。
それからしばらく携帯を見つめ、そして
「いやいやいや、馬っ鹿じゃないの!アイツら!マジもー!何なの!!もーっ!もーっ!!」
牛かな?と思うくらいの怒号を上げながら、独り言を叫んでいる。
閑静な住宅街なのだから、実に響く。
そんなことを気にしないマリさんは、モーモーと鳴きながら、髪の毛を掻きむしったり、地団駄を踏んだりしている。
おばあちゃんと見に行った能だか狂言だかで、こんな鬼のような女の仮面を被った人が、足を踏み鳴らしながら、髪をグルングルンさせていたのを想起させた。
「......」
そんな般若には、関わりたくないので、私は回れ右して玄関へ入ろうとする。
すると、マリさんが後ろから叫びにも近い声で、私を呼び止める。
「逃げんなし、ブス子!話の途中だろうが!」
先に携帯取り出して、会話を切った奴が何を言うんだろうか。
「ねーって!聞いてんでしょ!答えなさいよ!」
「何をですか」
「夢を見なくなる方法!早く!教えなさいよ!」
そこに戻るのか。自由過ぎないか。
「小林くんに聞くんでしょ?マユさんとモモさんが」
「あんな奴らの名前とか出すな!」
気でも触れたのか。
自分の発言が全て抜け落ちてるのか。
それとも、今の携帯がその要因か?
「どいつもこいつもふざけやがって!私が教えてって言ってるんだから、アンタは教えれば良いのよ!ブス子のくせに口答えすんな!」
あー。こいつ、ヤバいわー。
いつも3人で連んで、他の2人に偉そうにしてたけど、多分捨てられたんだろうな。
元々、桜田さんや高野さんみたいなスクールカーストの高いところに、居るだけ居て、何もしない人だったし。
そう言えば、高野さんは『マユたち』と言っていた。指示だけして見ていただけ、もしくは一緒にいて自分がやったかのように振る舞っていただけなのかもしれない。
いつだって、口だけ、の人だった気がする。
それでいて、色んなグループで他の人の陰口を言ったりしていたな。
女子嫌いの秋くんが「キョロ充の中でも、最も愚かな存在」「魔力も知恵もない妖魔士団団長」とめちゃくちゃ辛辣に切り捨てていた。
だが、私も理解できる。
実力は無いけど、プライドだけが肥大して。
人の批判だけして、保身に走って。
表面だけ取り繕って、甘い汁だけ吸って。
強い者に媚びへつらい、弱い者を棒で叩く。
すぐに派閥を乗り換えるくせに何もしない。
「教えるわけないじゃん、クズ」
私はそう言い放って、家に戻った。
○○○
夜、家に電話がかかってきた。
マリさんの家からだ。
向こうの親御さんから「マリは君に謝りに行ったのに、クズと罵倒して追い返したそうだね。帰って来てから、ずっと泣いて部屋から出て来なくなった。謝りに来るのが筋だ」と言って来た。
「それ、マリさんの嘘ですよ」と一言答え、電話を切った。




