騎士団の介入
お祭りでは、喧嘩や違法駐車が良くあるので警察が巡回をしている。
そのおかげもあってか、すぐに2人の警官が駆けつけた。
高野さんたちは「違うんです」とか大きな声で否定をしていたけれど、たくさんの人が私への金銭要求の恐喝を聞いていたため、取り繕いの虚偽と捕らえられた。
未成年のため、警官から保護者の呼び出しを指示される。その途端に青い顔になった。
その一方で、私や天田兄妹を睨みつけ、無言の圧力を掛けてきていた。
しばらく駄々を捏ねていたが、アイナちゃんのお兄さんが「この子と同じ小学校の6年生ですよ」と発言し身元を明かされると、観念したのか、家族の連絡先を警察に伝えた。
「算文小学校の生徒さん?」
警官の1人が、私とアイナちゃんに話しかけてきた。そうです、と答える私たち。
「今回のことの調書を取らせてもらわなくちゃいけないから、親御さんを呼んでもらってもいいかな?
後、別件でも今、算文小学校の生徒さんにはお話を聞かなきゃいけないんだ。お祭りの時なのに、時間がかかっちゃうかも知れないけど、ごめんね」
高野さんたちとは、打って変わっての優しい言葉使いだ。
これが“良い警官と悪い警官のメソッド”か。やるな、公僕!
「少年課の警察のおじさんが来るから、誤魔化したりせずにしっかり答えるんだよ。当事者じゃないからっていってふざけたりしちゃいけないよ。君たちのクラスの“いじめ”についてのことだから」
「えっ?」
ストライクど真ん中の当事者が、素っ頓狂な声をあげてしまった。
○○○
携帯電話を見ると、複数回の着信が母から入っていた。
参道を歩いている間はおしゃべりに夢中で、全然気づかなかったのだ。
母に電話をする。
「やっと出た!何で気づかなかったの」
「アイナちゃんたちとはしゃいでた」
「あぁ、そう。......そうじゃないの!メイ!アンタ、学校でいじめられてたの?」
「えっ、あっ。うん」
「さっき、校長先生から連絡があってね。野村って子がお地蔵さんを壊したから警察沙汰になってるそうなのよ。そこで、アンタのバッグに壊した首を入れたりしたのが分かったんだって。何か、学校の裏サイトみたいなのに、たくさんいじめの文章が出てきたらしくて、学校で事情を聞きたいから、来てくれって連絡が」
「あー、お母さん」
「何?」
「今、お祭りの会場なんだけど、カツアゲに遭って警察沙汰になってるの。警察の人が保護者に来てほしいって言われた」
「は?」
「警察の人に替わるね」
そう言って、警官に携帯を渡した。警官と母が電話越しで何か話をしている。
しばらく話した後、警官が私に携帯を返してくれた。「すぐ来るそうです」と一言言われた。
「あ、お母さん」
「何?」
なんだか疲れた声だ。
私は何も悪いことして無いのに、申し訳無い気分になる。
だがそれはそれとして、言っておきたいことがある。
「学校に来てくれって言われたの?」
「そうよ?」
「あのね。“テメェらが来い!”って返事しといて」
○○○
神社に家族がやって来た。
私の家族もだが、天田家の両親も来ていた。
来て早々に「お宅の長男さんは、しっかりされてますね。安心して預けられます」「ご立派な長男さんですな」とアイナちゃんのお兄さんをうちの親が褒めていた。
高野さんとその取り巻き2人に会った。向こうの家族も来ており、顔を合わせて早々に、平謝りしてきた。
恐喝とは言え、金銭の動きは無かった。
本来は謝罪と厳重注意で納めてもらいたいところであったのだろう。
だが、“別所”から1学期のいじめについてが露呈したらしく、ただでは終わらない状態なのを理解しているようだ。
「ウチのバカは、メイさんにどういったことをしたのでしょうか」
向こうの家族が聞いてきた。
私は母の顔を見る。
心配そうな顔をしているが「言いたくないかもだが言いなさい」と言った。
「もしかしたら、勘違いしている場所もあるかもしれないですが」
それを皮切りに、私は1学期されたことをつらつらと挙げていった。
「何もしてないんですが、体育館の裏に呼び出されて急に囲まれて『調子に乗るな』とか『学校来るな』とか『チクッたら殺す』とか脅されました」
「......」
「運動靴に砂を入れられたり、片方だけがなくなってたりして、体育の時、裸足でリレーをしなくちゃいけなかったこともありました」
「それは......私たちだけじゃない......です」
そうなのか、他にもした奴らがいるのか。
「教科書に落書きがあったり、授業中に悪口を書いた手紙を投げてきたり、筆箱の中身をばら撒かれたりしました」
「それも......私たちだけじゃない......です」
「誰も掃除を手伝ってくれず、挙句ウサギ小屋に閉じ込められました」
「それは......マユたちだし......」
そうか、アイツらか。
スルトの火力を増量しておこう。
「消しゴムのカス投げられたり、無視されたり、陰で聞こえるように悪口言われたり」
「......」
「水泳の前にトイレに行ったら、上から水をかけられたり」
「えっ、そんなこと......されたの......それは私たちじゃないです......」
高野さんたちまで心配そうに私を見ている。
これは違うんだな。
「アンタ、そんなことまでされてたの?」と母が青い顔で私を見ている。
「まだあるけど。他は誰がやったか知ってるから、こんなもんです」
そう言って向こうの家族を見ると、父親は赤銅色に顔を真っ赤にさせ、母親は蒼白になっている。
警官も「ひどいな」とボソリと漏らした。
「先生にも、何度も言ったんですが、信じてもらえませんでしたし。後、半年だから我慢すれば良いや、って思ってました」
○○○
その後、私たちは今回の恐喝の件だけを調書にまとめられ、一旦解放された。
私が言ったいじめ行動の方は、別件で取り扱っているらしく、連絡が来るらしい。
向こうの家族は、これから調書を取るらしいが、私の発言でだいぶ大きく動くらしい。
家族にはめちゃくちゃ謝ってもらったが、あの3人は頭を下げさせられただけだ。
どちらかと言うと、物事を大きくしたことに対しての怒りのような視線すら感じた。
“だから、私も解呪の呪文は使っていない。”
スルトの火力が増しただろうから、多分に攻略出来なくなっているだろう。
現実でも眠っても逃げ場が無くなりつつある、彼女たちを私は微笑で見送った。




