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いじめられっ子ダンジョン  作者: センチメンタルアスパラガス
冒険者ギルドを破壊しよう
14/38

冒険者 対 国立桜紋騎士団


裏サイトが炎上し、サッカークラブで斎藤と野村が殴り合いになっている頃、我らがダンジョンマスター 一ノ宮 メイは、朝顔の観察日記をつけ、紙粘土で貯金箱を作っていた。


ラジオ体操から帰ってきてからのメイは、ワクワクした顔をしている。


朝、ラジオ体操が終わった後、「隣町の神社で夏祭りをやっているから、一緒に行かない」とアイナに誘われた。


小学生2人では許してもらえないかもしれないと、アイナは自分の兄を付き添いという人身御供に捧げ、メイの親の承諾を得やすいよう調整まで行っていた。



「メイはホント、アイナちゃんと仲が良いわね」


「で、行っていい?」


「宿題もちゃんと終わらせているみたいだし、問題ないわよ。浴衣、着てく?」


「暑いからいいや」



○○○



17時。メイは、電車に乗り目的地の駅の改札口で天田兄妹と合流した。


アイナもアイナの兄も、浴衣や甚平姿と夏っぽい格好であった。


ジャージ姿のメイを見て、2人は訝しい顔つきになる。夏祭りなのに浴衣じゃないから、と言う理由ではない。着ているもの芋っぽいジャージだからだ。


アイナは朝のラジオ体操の時も、この芋ジャーを見ており、目つきが兄よりも鋭くなっている。



「メイちゃん、浴衣じゃないんだ」


「暑いと思って。着てこなかった」


「暑いからこそ、浴衣は着る物なのでは?」


「アイナのお兄さんは知らないかもだけど、おしゃれ浴衣って着てると変な汗をかくんですよ。そして全身汗疹になるんです」


「それはただの拒絶反応だよ」

「おしゃれアレルギーでは?」

アイナ兄妹が声を合わせ、返答する。


「まぁ。メイちゃんは“慢性おしゃれ欠乏症”だから仕方ないか」

「急なおしゃれの投与でショックを起こすかも知れないな」


「えっ、何その奇病。やだよ」



天田兄妹にツッコミを入れられながら(入れながら)、メイは鳥居を潜り、出店が並ぶ参道を歩くことになった。


その間、ずっとメイはキョロキョロと出店を見ていた。

隙あらば綿飴、隙あらばイカ焼、と大量の食料を購入しては舌鼓を打っていた。



だがこの光景に、昔からのメイを知っているアイナは、テンションが高過ぎると違和感を覚えていた。


メイは、どちらかと言うと世の中を冷めた目で見るタイプ。“早く来すぎた中二病”な感じだった。


だが、今のメイは百歩譲っても、お祭りをはしゃぐ子ども、にしか見えない。



元々おしゃべり好きなメイからすれば、1学期の無視される時間を取り戻すつもりで、しゃべっているだけであった。お祭り騒ぎも、おばあちゃんから「人間がわいわいして祝うのが、お祭りと神様へのマナー」と教わっていたので、マナーに則りわいわいしていただけであったのだが。



アイナは、勉強家なので、両親の仕事の資料などを読むことがある。


資料によると、精神的に不安定になると、多弁症状が見られることがあるらしい。双極性障害の躁病期に見られる症状が、それなのだそうだ。変にテンションが上がったり、自信過剰傾向になったり、万能感を抱いたりもする、と書いてあった。



1学期の自分たちのした浅はかな行為が、彼女を壊してしまった、とアイナは1人考え込んでしまっていた。



「ごめんね、メイちゃん」


「えっ」

とうもろこしを食べていた手を止め、アイナを見る。


「無理しなくていいからね?無理にテンション上げて、馬鹿なハムスターみたいにとうもろこしに齧り付かなくて良いから。ね?」


「えっ。なんで急にディスったの?」


「アイナ。何か変な深読みしてるみたいだけど、メイちゃんは元々こんなんだぞ」


「天田家は私に恨みでもあんのか!」



○○○



あー、楽しい。ちょっと、アイナちゃんが変なことを言うけど。とっても楽しい。


好きな格好をして、好きな人に囲まれて、好きなことをする、というのはとっても幸せだ。


どうしてお祭りの焼きそばやフランクフルトは美味しいのだろう。

普段なら絶対食べないくらいのぼったくりなのに、つい手が出てしまう。


この調子で買い食いしてたら、御賽銭が無くなってしまいますなぁ。



そんなことを考えながら、参道を進んでいると、彼女(メイ)の目に、社務所の前にいる女子のグループが映り込んだ。



「高野さん達だ」とアイナちゃんが言う。


高野さんたちは、サッカークラブのファンの子たちだ。私が斎藤くんから嫌がらせをされ始めたくらいに、一緒になって嫌がらせをしてきた。

取り合わなかったら、遂に体育館の裏に呼び出されて囲まれたりもした。

無視するタイプではなく、実際に手を出してくるタイプの人たち。


そんな奴らが、何故神聖な神社にいるのだろうか。

“邪”が入って来てしまっているのでは、結界の意味がないじゃないか。



そんな変なことを考えながら見ていた。


さっさと目を逸らしておけば良かったのに。



すると、たまたまだろうか。グループのうちの1人が、私たちに気づいた。目が合ってしまったのだ。


その子が他の2人に何かをしゃべった後、他の2人もこちらを見る。



「早くお参りして帰ろう?」と私が天田兄妹に話しかけたが遅かった。

ちょうど同じタイミングで人混みの向こうから「何してんのよ、ブス子」と話しかけられたのだった。



○○○



「いや、私たちはお祭りに来ただけよ」と私は淡々と返す。

それ以外に理由はないし、何もしていない。


質問に答えたのだから、さっさと居なくなって欲しい。時間は有限なのだ。



「アンタのせいでクラスみんなが大変なのに呑気なものね」


「私のせい?」

心底わからない、と言う顔をする。

十中八九悪夢のことだろうが、私とアバドゥンのことは、現実的には証明不可能だ。

私のせい、と言う意味が分からない。


「アンタが地蔵の首持ってたりするから、クラスみんなが祟られてんのよ」

「お前のせいなのに、何楽しそうにしてんのよ。ふざけてんの!」

「つか、アイナも何一緒にいんの?裏切り?」


3人の矛先がアイナちゃんにまで向く。

切れたナイフか。


なるほど。餓鬼たちのところの首無し邪神像から、『悪夢の原因はお地蔵さんの祟り』へ持っていったのだな。


私も誘導した感じではあったが、まさかここまで持って行かれるとは。

ちょっと面白い。

突けば、お地蔵さんの首を私の体操服入れに入れた犯人も漏らさないかな?



「お地蔵さんの首は、勝手に私の体操服入れに入れられていただけだし。私も被害者なんだけど」


「加害者が被害者ぶってんじゃねーよ!当たり屋かよ!」

「斎藤くんたちに買おうとしてた、厄祓いの御守り、お前が買えよ。賠償して誠意を見せろ」

「ていうか、クラス全員分買って詫びれよ!」



どう言う理論でそうなるのだろうか。


理解に苦しみ、私は頭を抱える。



「えーっと君たち、メイちゃんのクラスの子たちなのかな?」

高野さんたちが喚いていると、アイナちゃんのお兄さんが話かけてきた。


「だから何なのよ!」と高野さんが悪態をつく。相手は中学生なのに、よくも啖呵を切れるものだ。感心すらする。



一呼吸置いた後


「お祭りでテンション上がるのはしょうがないとしても、天下の往来で金品要求の恫喝とは中々の暴走っぷりだね。恐喝は立派な犯罪。通報したから逃げないでね」


アイナちゃんのお兄さんが冷たい笑顔で、高野さんたちに言い放った。

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