吸血鬼の血に染まった天使
次の日の朝になると勢いよくドアが開いた、徹夜で作業をしていたミシアは少し驚いて振り向いた、そこにはチカがミシアを起こしにきていた。
「おはようチカぐっすり眠れた?」
作業を一旦やめてチカの方に身体を向け少し眠そうにミシアが言った
起きていた事が不満だったのかチカは顔をムスッとさせてミシアのベッドに乗ってくる、拗ねている理由を聞こうにも教えてくれない、本人曰く拗ねてはいないらしい。
「お姉ちゃん何か悪い事した?」
ミシアはチカに質問するとゆっくりミシアを見て首を縦に振った。
「教えてくれなきゃわからないよチカ」
不機嫌になっていくチカの頭を撫でてあやす、次第にゆっくり口を動かした。
「お姉ちゃんが...起きてたから」
起きていたから怒っている?いつも起きるのが遅いと言ってくるのにどう言う事だろうか...そういえば起こしてくれる時間が最近は少し遅くなっている。
「ちょっと前からお姉ちゃんの寝顔で遊んでたの」
予想外の言葉に笑ってしまった、寝ている時の私で遊んでいたらしい、そんなことかと言おうとしたらチカから何故かブレスレットを貰った、本当に何故だろう。
「これ、チカが作ったの...あげるから怒らないでねお姉ちゃん♪」
怒るつもりは無かったがチカからのプレゼントだ、貰わない訳にはいかない、腕につけた後ありがとう、と一言言うとチカは頬を赤らめた、少し時間が経ち血を吸わせてもらった、少し違和感を覚えたがあまり気にしなかった、チカがみんなを起こしに行ってくれた、子供達のご飯を作りに部屋に向かおうとした時突然子供達の部屋から悲鳴が聞こえた。
それは昨日の嫌な予感が的中したかのように最悪の予想が頭を駆け巡る、全力で子供達のところに向かうと血まみれのチカがみんなをかばっているような態勢で倒れていた。
「チカ...?どうして...チカァァ!!」
ミシアは周りを見る余裕もなくし、血まみれのチカに向かって震える足でゆっくり近づいた。
「お姉ちゃん...お姉ちゃん...痛いよぉ...お姉ちゃん」
血まみれのチカはずっとそう呟いている、ミシアは涙を流しながらチカの傷を治療しようとするが吸血鬼の回復力ならばなんとか治るぐらいの重症だ、ましてや子供あと何秒耐えられるか分からない、チカを吸血鬼にするのは容易だが、チカには神の加護が備わっていて吸血鬼の血を受け取ることでより事態を悪化させるかもしれない、でもチカを死なせたくない、ミシアの頭はチカを助ける事でいっぱいだそんなことを考えずに行動をとった...。
少し苦しそうにしてはいるが上手くいったようだ、安堵の表情を浮かべチカに何があったのか子供達に話を聞こうとして振り向いた瞬間ミシアは気を失った。
ミシアの目が覚めたのはその日の夕方だった、何があったのかわからない、後ろから何かされたような気がする、そんな事を思いながら見渡すと部屋中血だらけになっていた、ミシアは子供達がいないことに気づき部屋の外へ繋がっている血を追った。
血を追いかけていると背中に羽根の様なものが生えたチカがボロボロになって倒れている、その先には私の部屋があり子供達が震えながら隠れていた、子供達が無事なのがわかると、チカを急いでジークの元に連れて行き見てもらった。
「ミシアは大丈夫なのかい?君も血だらけだけど」
ジークが気遣うように言った
「私は大丈夫だ、そんなことよりチカは大丈夫なの?」
「命に別状はないはずだよ、それよりあの羽根はなんだい?まさか君は吸血鬼の掟を破ったのかい?」
「...チカを助けるためにはしょうが無かったのよ...チカが無事ならもう用はないわ...ありがとう」
「お礼はいいよ、こっちも助けてもらった身だしね、それよりチカちゃんだけど...かなり適合してる、かなり暴れるよ」
ミシアはチカを背負うとすぐに館に戻っていった。
館に戻るとすぐにミシアの部屋にチカを寝かせた、子供達がチカの心配をして見に来たが危ないと言って部屋に戻らせた。
今日チカが暴走をしてしまったら少なくとも私と子供達は確実に死ぬ、チカをみてミシアは頑張れとチカの耳元で囁いた。
ここはどこだろう、どこを向いても真っ白な世界にチカは倒れていた。
一人は寂しい、チカは誰かを見つけようと必死にその真っ白な世界をひたすら走った。
どれくらい走ったのだろう、走っても走っても真っ白な世界に変化はない、チカはクタクタになって走るのを諦めた、怖い、けど探しても誰もいない、どうせいない、うずくまってそんな事を考えていると温かい物が頬に当たったような気がした。
「誰かいるの?」
チカはその一つの希望にすがりまた走り始めた、次第に色は白からやや赤っぽくなっていった。
薄い赤になり始めるとポツンと一人誰か立っているのが見えた、それは誰でも良かった、一人寂しい思いをしていたチカにはそれが誰かなど関係なかった、チカはその誰かの元に行こうとする、走って走って、必死に走るが足がもつれて転けてしまう。
たどり着けない、見えるのに届かない、寂しい思いがチカの瞳に涙を溢れさせる、チカはまたうずくまってしまった。
「起きて、起きて」
うずくまったまま眠っていたようでチカはハッとしてその言葉が聞こえる方向に視線を向ける、お姉ちゃんだった、それは毎日見ていたはずなのに何故か凄く懐かしいような気がした。
「そう...あなたが主なのね...ふふ、可愛いらしい子」
何かよく分からないことを言っているがいつものお姉ちゃんじゃないことはわかった。
「...ミシアお姉ちゃん...?」
そう言うと少し驚いたようにこちらを見つめてきた。
「私はあなたの知っているミシアではないわ、でもね私はあなたの事を知っている...あなたは素晴らしい子よ、だからここから先には進んじゃダメ」
真剣な表情でチカの知っているお姉ちゃんじゃないお姉ちゃんは言ってきた。
「あなたは素晴らしい子なの、私は多分あなたの事を凄く愛しているわ、だからこそこっち側に来ちゃ行けないのわかってくれるかしら?」
その言葉の意図はわからないが、うん、と頷いた。
「いい子ね、さあ戻りなさい、あなたの事を思っている私の元にね」
ニッコリと笑ったお姉ちゃんが白い光に包まれて消えていった、そうだ戻らないと、お姉ちゃんの元に...目を開くと心配そうな顔をしているお姉ちゃんがいた。
「あぁ、よかったチカ...吸血鬼化しなかったのね...よかった、よかった」




