戻ってきた家族
お姉ちゃんは一人ぼっちのチカを暗闇の中から救ってくれた。
救ってくれた時は暖かい光に包まれたように気持ちよかった、ずっと、ずっとずっとその光に包まれていたかった。
光が完全に遮断され、再び暗闇に戻ってしまった。また...一人ぼっち...。
「いやだ...いやだ...もう、一人ぼっちはいやだ!」
暗く1人しかいない館にはチカの声は響いた。
「あ...そうだ...お姉ちゃんは死んで...ない。」
吸血鬼になったチカの目が暗闇に映えるように不気味に光った。
一人ぼっちを際立たせるように冷たく寂しく。
一人きりになったチカを、見ていられなくなったミシアは一言だけ言葉を残した。
「大丈夫、チカは一人ぼっちじゃないよ。
お姉ちゃんがずっとついてるからね、見守って上げるからね。」
その言葉はチカの歩む道を真っ直ぐに戻らせた。
あれから十年経った。
みんながいなくなってもう十年、みんなはどこにいるんだろう。
この10年で心も体も成長していた。
一人は寂しいけれど、そんな時に夢かわからないけれど、たまにお姉ちゃんの声がする。
寂しくて辛い時に頑張ってるね、とか、えらいね、とか。
夢でも夢じゃなくてもお姉ちゃんの声がするだけで嬉しい、できれば夢じゃない方がいいけど...。
お姉ちゃんは行方不明らしい。
もしお姉ちゃんが死んでたとしたら、明日でちょうど死んでから十年経つ。
でも死んでいない気がした。
お姉ちゃんのぬくもりを、優しさを感じる。
明日は館を綺麗にしよう、らずっと綺麗に掃除してるけどもっと綺麗に。
明日は...みんな帰ってきてくれたらいいな...。
チカはミシアが行方不明になってから一人ぼっちだった。
毎日みんなの帰りを待った、待ち続けるうちに九年たっていた。
明日で十年、一年ごとにみんなが自分を、お姉ちゃんを忘れたのではないかと不安が大きくなっていく。
それでも前を見てにっこり笑って生活を続けてきた。
それがお姉ちゃんの最後の言葉、でも、もう限界かもしれない。
「だめ、だめ!弱気になっちゃダメだ!今日は家をもっと綺麗にしよう!」
弱気な心を払い除け掃除に取り掛かる、図書館の本の整理、部屋の片付け、物置の整頓、一人じゃ少し広すぎるけれど頑張ってやる、明日は大切な日だから。
「あれ...ミカ...?」
白いマントを羽織った人が、突然目の前に現れる。
「ミカ...またなの?」
この十年間で家族には会っていない、家族としては。
「そうだね、今じゃそれがお仕事なわけだしな...」
ミカが少し微笑み魔法陣を空中に出現させる、その瞬間気配を察したチカが後ろに飛び体制を立て直す。
「どうして!どうしてミカは吸血鬼を殺す事にしたの...?
お姉ちゃんの事...」
チカの言葉を遮るように力強い声が寂しい館の中を響かせる。
「忘れるはずないだろ...今日は姉さんのために帰ってきただけだよ。
今日と明日は何もしない。」
ミカは...お姉ちゃんのことを忘れていなかった、呼び方は変わっているけれど、しっかりとお姉ちゃんのことを覚えてる。
そしてチカ一人だけだった家に久しぶりに人が戻った、家族が。




