神は悪意を持って吸血鬼を救う
「やった...お姉ちゃんに勝っちゃった...あれ?...嬉しいはずなのに...なんで?」
まだ自我が残っているようだ、あと少し自我が戻ってこればチカは正気に戻るだろう。
「チカ、家族が待ってるわよ、行きなさい...ゴホッ...」
体の力が抜けていく、苦しい。
「あれ?お姉ちゃん?どうして...」
「落ち着いて...お姉ちゃんは旅に出るから...あの家の主はチカに任せたからね...」
もう、吸血鬼の治癒能力でもどうにもならない事を悟ったミシアは、最後にチカに館を任せた。
「チカ、あなたならできるわよ...お姉ちゃんのことはほうっておいて...ほら、もう家に帰りなさい。
後ろを向いちゃダメよ、それと...笑いなさいチカ」
泣きそうなチカの頬に手を当て撫でる。
自分でも驚くくらい力が入らなかった手は自然と愛する家族を慰めていた。
押せば倒れるような、そんな弱々しい力のない声だった、こうなったのは自分のせい、そう思いたくなかった。
現実から逃げるようにミシアに背を向けミカとジークがいる所まで戻った。
お姉ちゃんが言ったとおり後ろは見ずに...いや、ただ見るのが怖かったのかもしれない。
「帰ろ、ミカ」
状況がわからないミカは怒りの感情をさらけ出してチカに暴言を吐き捨てた。
「は?お姉ちゃんはどうするんだよ...お前がやったんだぞ?!お前がお姉ちゃんを!
...お姉ちゃんを連れ帰る。」
「ダメ」
聞こえるか分からないぐらいの、あまりにも小さいはずの声がミカを刺激する。
「見殺しにしろってのか?お前...」
「お姉ちゃんが...そうしてっていったの...!」
その時の表情は悲しみの顔でも泣いている顔でも無かった、ミシアに言われた通り、すこし寂しげではあったが笑っていた。
「ち、チカ...お前...」
何も言えなかった、自分よりお姉ちゃんが数倍好きであろうチカが笑っていた、頭がおかしくなったのかと不安がよぎる、だがその不安もお姉ちゃんならなんというかを考えるとすぐに納得できた。
「笑いなさい、かな」
黙って見ていたジークが心を読んだかのようにしゃべり始めた。
「君達はミシアに愛されてるね、ミシアなら今さっきと同じことを言うと思うよ。
だからさ、チカちゃんの言う通り帰ってあげなよミカ」
反対する事すら起きなかった。
だってそういうはずだから、チカの言う通り家にゆっくり帰った。
「さてさて、ミカもチカちゃんも帰っちゃったし、僕はどうしようかな〜...しょうがないな、君の眷属の言うとおりにしてやるよミシア、もっと君とは話したかったんだけどな〜」
そう言い残すと消えるように帰っていった。
「ああ、私はこれで終わりね...あの子達の世界を作って天使しかいない、まさに私と子供達の楽園を作ろうと思ったのに。
吸血鬼としての治癒能力が足掻いて早く死なせてくれないんだもの...でも言いたいことは言えた。
...今だけ感謝するわ、ありがとう」
ミシアはそのまま眠りについた。
「おや?」
聞き覚えのある声が聞こえる。
「なぜ貴女が死にそうなんです?私は貴女が死なない事を望んでいたのに」
この声は...




