最後
ゴクリゴクリと喉を鳴らすチカの表情が満足と悲しみで混ぜられていく。
自我が奪われて。
吸血鬼の血に支配されて。
家族も守れなくて。
約束も守れない。
...そんなの絶対嫌だ。
ルミの血を吸い終わりチカが動こうとした時、左右に凄まじい魔法が発動されチカの体が光に包まれた。
魔法を放ったのは...
館から居なくなっていたミカだった。
「やあチカ久しぶりだね、それよりさ、どうして家族に手をかけてるんだ?」
喋りながらルミをミシアに渡し、どんどんチカに近づいて行く。
ミカの問いかけには反応しない。
「...こんなので死ぬようなやつじゃないだろ、早く出てこいよチカ」
そういうと近づくミカの服を掴んで凄まじい速さで襲いかかってきた。
「オマエコロス」
勢いよくミカの顔を殴る
だがミカには傷一つできない。
「吸血鬼に接近戦で勝てるわけないでしょ、ガードしてるに決まってんじゃん」
魔法の壁でガードをして攻撃を喰らわないようにしていた、それを壊そうとチカは必死に攻撃していく。
「やあ、ミシア」
明るい声が聞こえた。
ジークだった、ミカがいる時点でジークがいることを予想していた。
「...ミカはやっぱり神官になったのね」
「ああ、素晴らしい才能だよ、君のところにいたから礼儀正しいし、潜在能力も有り得ないほどだ。
まあ一番凄いのは成長速度なんだけどね〜」
「そう、じゃあチカ相手でも...」
「それは無理だろうね、まず体力が持たないよ、しかも人間と吸血鬼を対等だと思わないでくれよ。
君みたいな化物から逃げる為に人間は魔法覚えたんだ、対等に戦えても10分も持たないよ」
ジークが答えると焦りを隠せないミシアは、チカを正気に戻す方法を考える。
ミシアは自分自身が感じた嫌な予感を思い出して、戦っているチカとミカに再び目をやる。
「ミカ!チカから離れなさい!」
ミカはミシアの声に驚いて一瞬だけスキが出来てしまった、その瞬間チカの表情が変わった。
「アハハ!壊れちゃえ!」
手をかざされると同時に異様な圧迫感に襲われた、ギリギリのタイミングでミシアに助けられたミカはため息をつく。
「はぁ...ごめんお姉ちゃんチカを救えなかった」
「いいのよ、ルミのこと頼むわね」
ルミをジークとミカに預けてチカの目の前に立った。
「チカ聞こえる?家族が待ってるわ早く戻って来て」
「アハ、何言ってんの!チカは家族なんて要らないよ!」
ミシアの声は届かず、すかさず攻撃を仕掛けてくる。
チカは血に乗っ取られて動けないのだろう、乗っ取られている時の苦しさは異常な物だ、それは私にもわかる。
でも、だからこそ、チカには打ち勝って欲しい。
チカが吸血鬼になったのは私のせいだ、だからしっかりと見ておかないとチカは壊れてしまう。
反撃はせずに受け流すかガードするかで戦っているが、正直勝てる気がしない、チカの攻撃速度がどんどん増していく。
チカの腕がミシアの胸を貫く、参戦しようとするジークとミカに手を向けて来るなと合図する。
「ゲホッ...」
「やった...お姉ちゃんに勝っちゃった...あれ?...嬉しいはずなのに...なんで?」
まだ自我が残っているようだ、あと少し自我が戻ってこればチカは正気に戻るだろう。
「チカ、家族が待ってるわよ、行きなさい...ゴホッ...」
体の力が抜けていく、苦しい。
「あれ?お姉ちゃん?どうして...」
「落ち着いて...お姉ちゃんは旅に出るから...あの家の主はチカに任せたからね...」
もう、吸血鬼の治癒能力でもどうにもならない事を悟ったミシアは、最後にチカに館を任せた。




