表情
苦しそうに悶えているレリアを見て笑うチカの目から涙が零れる、家族が死ぬ、家族を殺す、頭に過ぎる昔の記憶がチカを襲う。
一瞬我に戻るがそれはもはや手遅れだった。
またミシアの首元に牙を立て血を吸う、血を吸う感覚が頭に焼き付く。
「チカは化け物じゃ...ナイ...コロス邪魔者はコロス...アハ、お姉ちゃんノ血オイシイ」
意識が遠のいていくレリアはただただミシアの血を吸うチカを見ているだけだった。
「え...チカちゃん?」
そこには運悪く、戻ってこないレリアを見に来たルミがドアを開けてこちらを見ていた。
チカの、家族を守りたい、という意志が吸血衝動を抑える、だが簡単には収まるわけではなく、どんどん体の主導権が無くなっていく、このままじゃ家族を失うばっかりだ。
近くの窓から外に飛び出す、チカがとった行動は自分が家族の前から居なくなること、ただひたすら主導権が奪われていく体を無理に動かして遠くに、家族に見つからないように。
ただひたすら走る、後ろを振り返らずに、家族の事を忘れるように。
「はぁはぁはぁ...もっと...もっと遠くに行かなきゃ...」
肩で息をするチカに追い討ちをかけるように体の主導権は吸血鬼としての本能に奪われる。
荒れる、もしもここがルミの目の前だったなら...考えただけで嫌になる。
チカがルミの目の前から消えた直後、窓ガラスの割れる音で慌てて来たシフルは床に飛び散っている血と倒れているミシアとレリアに駆け寄った、シフルがルミの肩を叩いて何があったかを聞こうとするが肩を叩いた衝撃で後ろに倒れた。
ルミは恐ろしいものを見たように割れた窓ガラスの方向を腰を抜かして見ていた。
それからはルミとシフル二人がミシア、レリアの看病をし次第に夜が明けていった。
幼い二人は慣れない夜更かしをして眠気に襲われシフルは椅子に座って寝ている、ルミはチカの姿が頭にちらついて眠たいけれど眠れない。
それはあまりにも衝撃的な事実だったから、チカがお姉ちゃんの首元に口を当てていて、その口は真っ赤に染まっている。
チカちゃんはどこにいったんだろう、あの時の笑い顔と悲しそうにする表情が混ざった様な顔がいつの間にか眠ってしまっていたルミの夢に悪夢として出てきたその表情は異様に怖く恐ろしく感じた。




