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吸血鬼の考える世界  作者: ヨムネコ
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本能と理性

「いいのよ、でもあまり無茶はしないでね、あなたがいなくなると皆悲しんじゃうから」


「わかった...」


チカは申し訳なさそうにうつむいている、ゆっくり頭を撫でる。

次第に曇っていた表情が晴れていつものチカに戻っていた。


「もしまた思い出しそうになったらお姉ちゃんのところにきなさい、約束よ?約束破っちゃダメだからね?」


チカの小指を自分の小指に結びつけて指切りをする。


子供には無理をしてほしくないが、もしかするとその記憶が邪魔になってくる事があるかもしれない、元はと言えばそんな記憶を植え付けてしまったのはほかでもない私だ、罪滅ぼしになるかわからないが、出来るだけチカの力になってあげたい。


「うん、約束。

指切りしたから絶対に約束破らない!」


チカやレリアにもし私が会っていなかったら約束は守るためにあるのではなく縛るものだと考えていただろう、吸血鬼と人間の違いはなんなのだろうか、人間に育てられた吸血鬼は人間なのか吸血鬼なのか、吸血鬼に育てられた人間は人間なのか吸血鬼なのか。

人間が血を飲めば吸血鬼になれるのだろうか。

吸血鬼が血を飲まなければ人間になれるのか。

人間が中心となっている世界で吸血鬼はどう生きて行けばいいのか、欲望のままに荒れ狂い血を欲するのか。

大切な物を守るために理性で本能を押さえ込むのか。

自分の答えとは何か

また吸血鬼は考える

約束ひとつで考える

世界は何で出来ている?


「お姉ちゃん?」


幼い声がうっすら聞こえて脳が痺れる、透明な水の中に血が一滴ポタリと落ちる、落ちた血は水を喰い尽くすようにどんどん赤に変わる。

頭がグラグラする、血が欲しい、目の前の可愛い子供が欲しい、私の物にしたい。

理性がとぶ、本能が湧き出してくる。

チカがミシアに声をかけて数秒たった時には、チカの首元はミシアの口に触れてゴクゴクと音を立ててチカの血を吸い出しそれと同時にチカの身体はビクンと跳ねた。

それはいつものゆっくりとした吸血行動ではなく、本能だけがさらけ出した容赦の無いものだった。


血を飲み終えたミシアはチカの身体を離す、チカが重力に引っ張られて地面に叩きつけられる。

瞬間我に戻る、私の大切な人はぐったりとして横たわっている、それもつかの間また本能が暴れだした。


「おいしい...気持ちいい...体が、熱い...アハ...アハハハハハハ!」


その声は狂気で満たされていた、本能を押さえつけて我に戻ったミシアは慌てて横たわっているチカのもとに行き身体を揺する、また後悔する。

私がいるとこの子は、チカは死んでしまう。

涙を浮かべてチカの身体を抱きしめる、冷たい、死んではいないが今にも死にそうなくらいに...


何かに気づいたレリアはルミとシフルにここでじっとしてて、と言うと急いでミシアの部屋に向かった。


部屋に入ると横たわっているチカとそれに寄り添っているミシアだった。

ミシアがこちらに気づいた時には遅かった、何も知らないレリアはミシアの変貌に気づかず近づいたその時、ミシアはレリアを見るとチカを離して立ち上がる。


一瞬の出来事だった、首元に牙が刺さり皮膚を貫く音が脳内で響く。

勢いがついていたせいか後ろに倒れる。

一気に血を吸い取られ力が出なくなりやがて瞼さえも重くなってきた、ミシアが狂ったように囁く


「アハ...貴女の血もおいしい...あの子とは違う味...貴女の全てはもう私の物」


レリアの身体が跳ねる、あつい、苦しい、でも気持ちいい。

レリアは身体をおさえ、ハァハァと辛そうに息をして悶える。

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